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「やまだ」

その唇がたどる俺を呼ぶ言葉は、ただの記号ではない特別な響き。

俺だけの。

「好きだよ。やまだ。大好き、俺も」

「うん」

「好き」

ぽろり、ともう一筋その瞳から雫が落ちた。

その綺麗な雫に、俺の心臓がきゅうっとなった。


勿体無い。


咄嗟にそう思って、その頬にある雫に唇を寄せる。

伊野尾ちゃんが体を強張らせたのが分かった。

「お…お前は…」

その年齢に似つかわしくない可愛らしい顔を真っ赤に染めて、俺の唇が触れた頬の辺りを手の甲で押さえる。

「恥っず!お前急に何してんの」

余りに初心な反応をする伊野尾ちゃんにつられて、俺の顔にもカッと熱が集まった。

「しょうがないだろ。無意識だもん」

「無意識で、ちゅ、ちゅーとかすんな、ぼけ」

「え、今のちゅーにカウントされんの?待ってよ、それ俺超カッコ悪いじゃん」

「お前のカッコいいとか悪いとか、知ったこっちゃねえよ」

「ダメダメ、違う。今のちゅーは無しで!」

余りの俺の必死さに伊野尾ちゃんは吹き出した。

ああ。ほら。
その華が開くみたいな笑顔が。

たまらなく愛しい。

「伊野尾ちゃん。ぎゅってしていい?」

笑うのをやめて、ますます真っ赤になった伊野尾ちゃんが、俯いてこくんと頷いた。


知念。
今度は合意の下だから。
犯罪じゃないんだからね。


肩に乗ったままだった手を背中に回して、俺は伊野尾ちゃんを抱き締めた。

椅子に座ったままの伊野尾ちゃんは、すこし前屈みになって俺に体を委ねてくれる。
俺の肩に頭を乗せて、おずおずと背中に手を回した。

なんだろう。
すげえ、しっくりくる。

やっと探していたものに出会えたような。
初めから実はこれが正解のカタチだったんじゃないか、みたいな。

伊野尾ちゃんの体を抱き締めてる感触が、あまりにしっくりくるから。

離れたくなくて、ますますぎゅっと力を込めた。

「やまだ」

「なあに?」

「……ひどい事言ってごめんね」

伊野尾ちゃんは俺の肩に頭を乗せたまま続ける。

「好きじゃないなんて、言ってごめん。……トイレで突き飛ばしてごめん。それから…」

俺の肩がじんわり温かく濡れているのが分かった。

俺は伊野尾ちゃんの事になると馬鹿になるけど、この人は俺の事になると、どうも泣き虫になるみたいだ。

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , 山田涼介伊野尾慧 , やまいの   
作品ジャンル:恋愛
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント!ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます! (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます!ヤバいです!たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます!なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……(涙)。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たろう | 作成日時:2023年12月15日 18時

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