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全ての収録が終わって楽屋に戻る途中、雄也がそっと近付いて来た。
「山田。少しだけこの後話せる？」
さっきトイレで見せた俺への不審な怒りはもう見えない。
いつもの優しい雄也だ。
「次の現場の時間までなら」
「悪いな」
雄也はそう言って、眉を下げた。
「ごめんな、山田」
着替えを済ませて、他のメンバーがそれぞれ出て行って二人きりになった楽屋で、雄也はいきなり俺に頭を下げた。
「え、何？」
「今日トイレで。理由も聞かずにお前に変な言い掛かりつけたからさ。悪かった」
真っ直ぐ俺に向けて頭を下げる雄也。
正直、言い掛かりでも何でもなく、あれは俺のせい。
伊野尾ちゃんは咄嗟に自分が悪いような言い方して庇ってくれたけど。
雄也はそれを見抜いていたように見えた。
でもこうして、俺に謝ってくれてる。
どうして俺の周りはみんな、大人で強くて優しい人間ばかりなんだろう。
あれは本当に俺のせいだった、と言いかけて、どう説明していいのか言葉に迷う。
「言い掛かりじゃないよ。多分俺のせいだから」
すると雄也は困ったような顔をした。
「伊野尾くんがさ、『山田に悪い事した』ってあの後ずっと言ってたから。『山田のせいじゃない』って。仮に山田の言った通りだとしても、お前が悪者になる事は伊野尾くんの本意じゃない」
本当に。
あの人はどこまで。
何だか。
うん。
ちょっと。
「俺、腹立ってきた」
俺はずっと伊野尾ちゃんに守ってもらうままなのか。
あの人にとって俺はずっとそういう対象なのか。
「あの人何なんだよ。自分ばっかり悪者になってたら、それで良いなんて。何か無性に腹立ってきた」
「山田？」
「伊野尾ちゃんがトイレで雄也にぶつかったのも、なんなら最近伊野尾ちゃんが痩せたのも、今日貧血で倒れそうになったのも、全部俺のせいだから」
伊野尾ちゃんを傷付けたのは俺。
伊野尾ちゃんを痩せちゃうくらいに悩ませたのは俺。
伊野尾ちゃんを抱き締めて動揺させたのは、俺。
他の誰でもない。
全部俺のせい。
だから。
俺が、全部。
伊野尾ちゃんの全部を守りたい。
俺が。
あの人の原因であり結果でありたい。
「あの人にばっかり、自己完結させねぇし」
俺の急な剣幕に、雄也は目を瞠った。
ふは、と笑って、それから真面目な顔に戻る。
「伊野尾くんさ、ここ二週間くらい塞ぎ込んでて」
伊野尾ちゃんの事を思い出しているのだろうか。
俯き加減で話すその表情は、優しげであり、心配そうでもある。
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
