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「トイレ。漏れるっつうの」
ポーカーフェイスを取り戻した伊野尾ちゃんは、治安の悪い笑みを『貼り付けて』、肩を竦めた。
俺に背中を向けて、トイレへと早足で歩いていく。
その背中が、やっぱり震えて泣いているように見えて、俺はたまらなくなった。
トイレに入ったところでもう一度伊野尾ちゃんをつかまえる。
肩を掴んで強引に体をこちらに向けるけれど、伊野尾ちゃんは頑なに俯いて顔を上げない。
「伊野尾ちゃん」
伊野尾ちゃんより背の低い俺は、必然的に顔を下から覗き込む形になった。
「や…、見んな」
首を横に捻って、俺の視線から顔を背ける。
その拍子に、前より少しほっそりした丸い頬を、雫が滑り落ちた。
駄目だ。
もう。
それは。
ただこの人の事を愛しいと思う衝動。
もう泣かないでほしいという切実な願い。
気がつけば俺は伊野尾ちゃんを抱き締めていた。
やっぱり駄目だ。
好きだ、俺。
伊野尾ちゃんの事、諦められない。
愛しくて愛しくて仕方がない。
ひゅ、と息を詰めて、伊野尾ちゃんが俺の腕の中で体を硬くした。
離したくない一心で、俺は更に腕に力を込める。
「…や、」
ぐい、と伊野尾ちゃんが俺の胸を押し返した。
「はな…して…！」
「伊野尾ちゃん」
普段では考えられない力で俺を押し剥がし、その勢いでトイレの壁にお互い背中を打ちつけた。
「った……、」
体勢が整わないまま、よろよろと伊野尾ちゃんがトイレを出て行こうとする。
その時、ちょうどトイレに入って来た人陰に伊野尾ちゃんはぶつかって倒れ込んだ。
「うわっ……、伊野尾くん？」
倒れ込んだ伊野尾ちゃんを受け止めたのは雄也だった。
「……伊野尾くん、どうした？」
いつもと様子の違う伊野尾ちゃんに気付いた雄也が、鋭く、でも労しげに声を掛ける。
それでもすぐには顔を上げずにいる伊野尾ちゃんの様子に、雄也が俺を見た。
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
