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「苺はビタミンも豊富なんだぜ」
取ってつけたように苺の良さをわざと真顔で勧めてくる大ちゃん。
「俺は食う」
そしてそのまま真っ赤な果実を頬張った。
ふわり、と甘い匂いがする。
「うま！これマジで美味い」
感嘆の声を漏らす大ちゃん。
ああ、そういえば俺、苺好きだっけ。
そんな事も忘れてたけど。
いい匂いだな。
思わず手を伸ばして、ひと粒苺を手に取った。
ヘタを取って、そのまま口に放り込む。
「甘……。うま……」
久しぶりに、食べ物を美味しいと感じた。
ちゃんと咀嚼して、味わって。
大袈裟だけれど、体の中に苺が染み込んで行く気すらする。
「山田、好きなだけ食べな。食べたい物をその時食べるのが、一番栄養になるんだぜ」
誰の言葉かも分からないけれど、大ちゃんにしては説得力あるな。
そう思いながら、俺は次々苺に手を伸ばした。
少しだけ生き返った。
そんな気がした。
それから、何故かグループの現場に入るたびに、楽屋には苺が差し入れられていた。
品種の違う苺が毎回毎回テーブルに置かれていて、俺はその度にちょっとずっと息を吹き返して行くような気がした。
俺の好きな物を、俺が元気になるように差し入れてくれている。
きっと大ちゃんやマネージャーだろうその気遣いが、とても嬉しく温かかった。
大ちゃんや雄也の助言もあり、俺はグループの為になるならとソロデビューをした。
仕事は相変わらず馬鹿みたいに忙しかったけれど、メンバーの存在が心の支えになってどうにかやり切れた。
相変わらず、あの人は俺にはあまり笑いかけない。
ただ、時折苺を頬張っている俺を見かけて、ほんの少し口角を上げる事はあった。
ほんの僅かに。
あの人へのイライラは相変わらず感じていたけれど、いつの間にかそれは『俺だけあの人から笑顔を向けられない』というイライラに変わっていた。
何であの人は俺にだけ笑いかけないのか。
何であの人は俺にだけ話しかけないのか。
何であの人は。
俺の事をあんなに辛そうに見ているのか。
すごく。
いらいらした。
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
