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言葉に詰まった俺に、伊野尾ちゃんは優しい眼差しを投げた。
でも、その中には強い意志が見える。
「やまだも、そうじゃない？だってお前、最初っから諦めきった顔で告白してきたじゃん。そういうことなんだって」
だってそれは。
伊野尾ちゃんに受け入れてもらえるなんて、思ってもみなかったから。
初めから。
恋人同士になる俺と伊野尾ちゃんを、想像なんてしてなかったから。
本当に？
本当にそうだろうか。
リアルに想像出来なかったのは、これが到底受け入れられる恋愛だとは、自分自身でも思っていなかったからじゃないのか。
メンバーからも、事務所からも。
ファンのコからも、世の中からも。
祝福されるものではないと、わかっていたからじゃないのか？
「俺もやまだも。もうどう望まれているか、どう応えていくか。それを体現していくことが生き方に染み付いちゃってんだよ」
叶わない夢は見ない事。
現実を受け入れる事。
世の中は俺達の都合の良いようには、出来ていない事。
黙り込んで何も言えない俺に、伊野尾ちゃんは優しく続けた。
「だから、この話はこれで終わり」
「……伊野尾ちゃん…」
「俺が臆病なだけなんだ。ゴメンな。でも嬉しかった。やまだが俺を好きでいてくれて、嬉しかった」
伊野尾ちゃんはふわりと笑って、俺の方に手を伸ばした。
白くて細い綺麗な指先が、俺の頬に触れる。
ゆっくりと、手のひらで愛おしそうに頬を撫でた後、名残惜しそうに離れていった。
「やまだ。ありがとう」
「伊野尾ちゃん……！」
「俺、ちょっと旅館の中ぶらっとして来る」
そう言って、伊野尾ちゃんは徐ろに立ち上がった。
俺が止める間もなく、そのまま部屋の出口の方まで歩いていく。
「やまだは明日早いんだから、早く寝な」
肩越しにそう言って。
襖に手を掛けた。
「ごめんな」
こちらに頑なに背中を向けている伊野尾ちゃんの表情は窺い知れない。
でも。
その声は少しだけ掠れていて。
相変わらず薄い背中が精一杯俺を拒絶しているように見えた。
いつかの、消えそうな伊野尾ちゃんの背中に重なる。
自分の矜持を守るための、最後の砦のようだった、あの背中に。
マネージャーの部屋に行ったのか、ロビーかどこかで、夜を明かしたのか。
俺が朝イチ東京へ戻るために旅館を出るまで。
伊野尾ちゃんが部屋に戻ることはなかった。
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
