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伊野尾ちゃんは俺を暫く凝視した後、ふい、と目を逸らして天井を仰いだ。
それからふうー、と深く息を吐く。
「お前はやっぱり、すごいね」
微かにこぼれた言葉。
「かなわねぇわ、やっぱ」
「伊野尾ちゃん……？」
俺の声に、仰いでいた顔を戻した。
その大きな垂れ気味の瞳はゆらりと揺れて、俺よりも遠くを見ているよう。
すう、と小さく息を吸った唇は微かに震えていた。
「やまだ」
震えた唇で発した声はやはり震えていて、愛しい人が俺の名を呼んでいるのに、どうしようもなく切なくなった。
嫌悪でも、拒絶でもないその表情。
でも俺は今から振られるんだと覚悟した。
分かっていたことだけど、やっぱり辛い。
けれども伊野尾ちゃんから続けて聞こえた言葉は、全く違うものだった。
「ありがとう、やまだ。俺みたいな奴に、そんな真っ直ぐ気持ちを伝えてくれて」
「だって、俺は本気で伊野尾ちゃんの事好きだから」
「うん。ありがとう。俺はズルいから。本当は自分が傷付かないようにはぐらかすつもりだったけど、駄目だよね」
そう言って、伊野尾ちゃんは微かに微笑んだ。
「一度しか言わないから、良く聞いて」
座卓の上にある、白くて綺麗な手はぎゅっと握られて震えている。
緊張している時の、彼の癖だ。
「俺もやまだが好き。やまだが思ってくれてるのとおんなじ意味で、やまだが好きだ」
思ってもみなかった言葉が彼の口から紡がれる。
「見た目も勿論そうだけど、バカ正直なところも、優しいところも、案外ポンコツなところも、ストイックなところも。他人に厳しいけど、それ以上に自分自身に厳しいところも。全部。全部、大好きだよ」
信じられない。
伊野尾ちゃんが、俺の事を好き？
俺と、おんなじ意味で？
伊野尾ちゃんも俺に恋愛感情を持っていてくれるって事？
伊野尾ちゃんの魅惑的な瞳はじっと俺を見つめている。
ゆらゆら、いつもより水分を湛えて揺れて見えるのは、伊野尾ちゃんが本音で話しているから？
「マジ…で？ホントに？」
「この期に及んで嘘つかないよ。……今さらお前に嫌われたくない」
頭の中がバグって、混乱してる。
でも、ふつふつと。
心の奥から湧いてくる、嬉しい気持ち。
俺達両想いって事でしょ？伊野尾ちゃん。
こんなに幸せな事、ある？
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
