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「サボってなんかないでしょ。あんた、ずっとやれる事はやってきたじゃん」
あの頃の自分にも告げるように。
今の彼に言い聞かせるように。
自分の言葉にあんた自身が傷つく必要はないんだ、と伝わるように。
俺は白くて繊細そうな肌にそっと手を伸ばす。
指の先が彼の頬に触れた。
想像した以上に柔らかくて冷たい感触に、心臓がどくん、と鳴った。
仕事以外で彼に触れるのは、初めてだった。
「すげー隈出来てる。随分と痩せたし」
彼の目元に居座る、青黒い隈。
俺が触れる事で、この隈を振り払ってやれたらいいのに。
繊細で壊れそうな肌を傷付けないよう、頬に手を添え、親指の腹でゆっくり隈をなぞった。
驚いたように見開かれた大きな瞳。
そのゆるりと水分を蓄えた印象的な垂れ気味の目が、二回ほど瞬いた。
「ちゃんと食べてんの？」
「……ま、まあ」
取り繕う気もないような、適当な返事。
きっと食事すらままならなくて、考える事すら億劫なのだろう。
「好きな物だけでもいいから、なるべく口にしたほうがいいよ。あと、温かいもん」
以前の俺が大ちゃんから言われた事を、今度は彼に伝える。
俺はあの時本当に、あの苺に助けられたから。
「……じゃあ、トマトと納豆」
「うわ、俺の嫌いなもん二大双璧じゃん」
「俺のアイデンティティを簡単に否定すんな」
嫌いな食べ物の名前が出て、思わず顔をしかめた俺に、間髪入れずに突っ込んだ彼。
言葉の選び方も賢くて絶妙で、そういえば俺は彼のこういうところが案外嫌いじゃなかったなと思った。
「しかも両方冷たい食べもん」
「あ、ホントだね」
ふふ、とどちらからともなく頬が緩んだ。
自然に笑いが洩れる会話なんて、この人とした事があっただろうか。
彼の周りの張り詰めていた空気がほんの少しだけ緩んだ気がした。
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
