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立つ鳥跡を濁さず。
せめて迷惑は最小限にしたい。
早く撮影スタッフに合流しなければ。
「よいしょ」
気合を入れて上体を起こす。
「痛た……。腰打ったかな。わっ、やべぇ！衣装破れてる」
左肘から袖口にかけて、大きく裂けた服。枝に引っ掛けたのだろうか、少しだけ血が滲み出していた。
「買い取りじゃん…。あー、ごめんなさい」
マネージャーの顔を思い浮かべて、思わず口からお詫びがこぼれた。
頭上を見上げる。どのあたりから滑って落ちてきたのか、見当もつかない。
どこも同じような木が生い茂っていて、方向も定かではない。
体の真横に這っている木の根を手掛かりに、痛む体を引き上げて立ち上がる。
「っっあぁっ、いってぇ！！」
右足首に激痛。
落ちてくるとき、捻ったみたいだ。
「…っ、はぁ、っはぁ、……」
とにかく合流するか、スマホの電波が入るところまで、移動しなきゃ。
これ以上、迷惑かけたくない。
一歩、一歩、進むたびに足首が痛む。
俺の腕力でも折ることの出来た枝を支えに、取り敢えず勘だけを頼りに歩く。
「ボロボロだ、俺」
なんか、あまりに惨めで笑えてくる。
枝に引っ掻かれた左腕がヒリヒリする。
地面にしこたま打ち付けただろう背中も痛い。
右の足首からふくらはぎにかけて、めちゃめちゃ痛い。
よくファンの人が『キレイだ』って褒めてくれる手だって、もう泥だらけで傷だらけだ。
でも、早く戻らないと。
早く戻って、お詫びしないと。
ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした、て。
………。
………もう、いやだ。
もう、頑張りたくない。
「……っ、っく、……ぅ、…っ！」
喉の奥が痛い。
歯を食いしばって我慢してても、嗚咽が洩れる。
ぽたぽた、ひっきりなし涙が溢れて視界が歪む。
頑張ったって、真面目にやってたって、結局こんな事になる。
本当に、報われない事ばかりだ。
努力がまだまだ足りなかった？
必死さが足りなかった？
しんどい。
しんどい。
もう疲れた。
膝がかくん、と折れて、全身の力が抜ける。
地面に向かって体が傾いでいく。
色々なところが痛いけれど、まあもう、いいや、と思う。
俺はゆっくり意識を手放した。
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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした！精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2022年12月24日 20時
