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俺が敢えて口にした『退所』という言葉に、さらに重い空気が漂う。
「その…、退所の話ってホントなのかな。俺…ちゃんからそんな話………全然聞いてなくて……」
大ちゃんがその童顔ともよく言われる顔を歪めて、言葉を絞り出す。
伊野尾とはメンバーの中でも距離感の近いほうだ。
何も相談されていなかった事に、無力感を感じているのだろう。
それはあいつと同期で、ずっとこの事務所で一緒に闘ってきた俺も同じ思いだった。
「CMの仕事、喜んでたのにね」
侑李がぽつんと言う。
「『ドッキリだったりして』って…いのちゃん言ってたから。僕言ったんだよね。『いのちゃん、ホントに自分の事分かってないよね』って…。あの人すんごい自己評価低いから……。でも、嬉しそうだったのに」
「でも」
ずっと黙っていた�睫擇�、静かな声で言う。
「なかなか退所希望が通らなかったからって、伊野尾くんが現場を放棄するような人だとは、俺は思えないな」
強い、瞳。
「少なくとも俺が知ってる伊野尾くんは」
それはきっと、メンバーの誰もが思っていることだろう。そして事務所に感じている違和感でもある。
「俺もいのちゃんがいい加減な人だとは思ってない。でも、事務所がその可能性を考えてるってことはさ、いのちゃんがよっぽど退所を急いでたって事でしょ？それか、事務所と揉めてたか……」
「光の言いたいことは分かる。伊野尾が自分から消えたって思わせる何かが、事務所との間にあったんじゃないかって事だろ？」
「うん。最近ずっと、変な感じで仕事入ってたしさ」
「そういえば、マネージャーもそんな事言ってたな。無理やりに仕事詰め込んでるって」
椅子に反対の向きに座り、背もたれを抱き込むようにして顎を乗せたまま、大ちゃんが光の方を見た。
「だからって………いのちゃんそんな事するかな…」
「事務所と揉めてたのかどうかも分かんないね。あの人とことん平和主義者だから。本来なら自分が我慢するタイプでしょ」
「知念もそう思う？」
「大貴もでしょ。だからすんごい違和感」
「いずれにしても」
壁の時計を見る。正午だった。
「伊野尾を探してもらおう。無事にあいつが帰ってきて。それからだ」
そこに居るメンバー全員が頷いた。
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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした！精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2022年12月24日 20時
