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野田が逃げるように退席した後。
俺はまだダメージから立ち直れないでいた。
頭の中も感情もぐちゃぐちゃだった。
やっぱり俺が悪かったのか？俺が何にも持ってないって事、分かるやつには分かるの？
今まで自分が出来る事を必死にやって来たけど、それだけじゃ駄目だったのかな。
「いのちゃん。今何考えてる？」
俺の背中にまだ手を添えたまま、光が気遣わしげにきく。
「別に、大丈夫」
気を遣わせてる。
ハッとして、俺は出来る限り笑ってみせた。
「大丈夫、じゃないよね？」
だって、手が震えてるし。と俺の弱点をついてくる。
「笑えるなあ……。俺が撒いた種だったのかな。知らない間に野田の事も傷付けてたのかなあ」
あれだけ、人から憎まれていた。
あれだけ人を憎むのだって、きっとしんどい事だろう。
「伊野尾。野田の事でお前が責任を感じる事は何一つない。それは間違えるなよ」
先程までの低い冷たい声ではなく、いつもの薮の声。
「お前が今までしてきた事は間違ってない。俺たちはそれを知っているし、お前が誰かに非難されたとしても、俺たちはその理不尽をいくらでも払ってやれる」
薮が俺の肩に触れる。
背中にある光の手に負けない、温かい大きな手。
「お前があいつの言うような、見てくれだけの人間じゃない事は、俺たちみんなが知ってる。誰に聞かれても胸を張って大事なメンバーだと言える。でも、お前がお前自身を認めてやるかどうかは、お前自身の問題だから」
グッと肩に触れる手に力を込める。
「だから。頑張れ」
不意に視界がぼやけて、涙が溢れてきた。
止めようとしてもそれは止まらず、後から後から、俺の頬を伝う。
悲しいのか、嬉しいのか、悔しいのか、安堵なのか。
あるいはその全てなのか。
光の手は相変わらず背中に添えられ、ゆっくりと上下して穏やかな気持ちにさせる。
薮はあまりに俺が無防備に涙を流すから、困ったようにいつものフニャフニャした顔で俺を見ていた。
何とか涙がおさまって、しゃくり上げていた息も落ち着いてくる。
「俺ぇ……」
放った声はもう震えてはいなかった。
「なに？いのちゃん」
「俺……リアル壁ドン……初めて見た」
「ぶはっ」
光が堪えきれずに吹き出す。
「薮…、カッコ良かったよ」
「おちょくるな、お前。俺イジリが過ぎるぞ」
「いやいや、ホントに」
ありがとう。
ありがとう。二人とも。
暫くぶりに、心の底から笑える気がした。
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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした！精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2022年12月24日 20時
