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「『代わり』だってよ、『代わり』。笑えるだろうが。どうせお前は先輩たちに、そのナリで媚び売って、俺にそのクソみたいな役目を押し付けてたんだろ」
「や……俺、知らな……」
ようやく絞り出した言葉は意味を成さない。
たまたま企業CMを作ろうという企画があがった際、株主である代理店の部長が伊野尾のファンだという事を思い出した。
事務所へと企画を打診した際、マネージメント部に知った顔がいるのを知り、このような事を思いついたのだ。
悪意と真実の曝露は止まらず、野田は壊れたラジオみたいに喋り続けた。
「俺を連れ込んでた先輩たちの中に、北崎もいて、面白がって写真撮ってたのを思い出してさ。お前を連れ込んだ時の写真も撮ってないかきいたんだよ。案の定後生大事に保存してたよ、あの変態野郎。ヤスカワさんにその写真のデータ見せたら、すげぇ喜んでたな。どいつもこいつも気持ち悪い」
野田は憎々しげに俺を睨みつけ、吐き捨てる。
「俺はお前がずっと嫌いだった。テレビで見る度にその媚を売るような顔や態度に吐き気がしてた。北崎は色々オモテには言えないような事をしてたから、それをつついてやったら言いなりだったよ。だからさ、少しでも長くお前を苦しめてやるように言いつけといた」
もうちょっと楽しめると思ったのに、と悪びれる様子もなく残念そうに言った。
「ただの逆恨みじゃん。最低」
光が眉をしかめたまま、野田を咎める。
いつの間にかその手のひらは、俺の背中に添えられていた。
「お前は勘違いしているが」
薮の声は、今まで聞いたことのあるどんな時よりも低く、重く、冷たい。
「うちの伊野尾は、誰かに媚を売った事は一度も無いし、何より、見てくれだけでここまでやって来たわけじゃない。そんな甘い業界じゃねえよ。なめてんのか」
薮の、あまりに静かな怒りに、初めて野田が怯んだ。
「お前がクソみたいな先輩たちに酷い事をされたのは同情する。でもその恨みを伊野尾になすり付けるのは違うだろ」
そして、バン、と野田の顔の横を掠めて、手のひらを壁に押し当てた。
「今度こいつの邪魔するような事があったら。俺が使えるあらゆるモン使って潰してやるから。二度と関わるな」
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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした!精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たろう | 作成日時:2022年12月24日 20時