7日目 cn ページ34
僕は今、個室の焼肉屋さんに来ている。
向かいの席には冴えない顔をした、僕の
黙々と僕の為に肉を焼いては、甲斐甲斐しくタレや塩などのお皿に乗せていく。
そして、僕の機嫌を伺うようにこちらをちらちら見てくる。
「……なぁに、涼介。言いたいことあるんなら、言えば」
すると涼介は、一旦肉を焼く手を止めて、烏龍茶をひとくち飲む。
両手を膝の上に置いて、ちょっとお行儀良く座り直した。
「……言いたいこと、あるのは知念の方でしょ」
「僕は勿論あるよ。でなきゃいのちゃんが大変な時に、わざわざ焼肉に誘ったりしないでしょうよ」
涼介は一瞬憮然とした顔をした後、項垂れてしまう。
「わかってるよ。知念の言いたい事は。伊野尾ちゃんに言い過ぎって事でしょ」
昨日、いのちゃんが戻って来て、みんなで無事を喜んだあと。
当然だけどいのちゃんの退所の話になった。
皆が確認したくて仕方がない事だったから。
涼介がその件で口火を切ってくれて、どうにかいのちゃんから事情を聞こうとしたけど、いのちゃんは結局何にも言ってくれなかった。
だから、涼介が苛々してあんな口調で責め立ててしまった事も、共感出来なくはない。
……出来なくはないけど。
「いのちゃん、傷ついた顔してたね」
ぐぅ……と涼介が更に項垂れる。
「でも。涼介も傷ついた顔してたね。それで、今も」
涼介が顔を上げて僕を見る。
「だからさ、一応目で合図送ったんだよ。涼介は言い過ぎて、後で絶対に後悔するって。それで傷つくのは涼介自身なんだからさ」
まあ、涼介の馬鹿正直な性格上、言っても無駄だとは思うけど。
「ちぃ………」
「そんな弱気な声出さないでよ。うちの不動のエースでしょ」
涼介の焼いてくれた肉を口に放り込む。
その様子を見てほっとしたのか、涼介も食事に手をつけ始めた。
「いのちゃんさぁ。グループの事、すっごく好きだと思うんだよね」
僕はいのちゃんの事が大好きだし、JUMPの事も愛してるから、よく分かる。
あの人からは、グループへの愛しか感じない。感謝とか、メンバーへのリスペクトとか、色々思いついてくれる企画全てが。
「『好き』しか感じないの。だからね、昨日いのちゃんが言ったあのボヤッとした理由は、嘘だと思うんだよね」
「……うん」
涼介もきっと分かっていて。でも、こちらに心を開いてくれないいのちゃんに、悲しくなったんだよね。
241人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした!精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たろう | 作成日時:2022年12月24日 20時