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『失礼しました』

唐突に野田の声が上から降ってきて、俺は我に返った。

野田が手洗いから戻って来ていた。
ヤスカワはスマホをいつの間にかしまい、元の席の位置に戻っている。

『伊野尾くん?顔色が悪いけど、どうかした?』
気遣う野田の言葉に、俺は首を横に振るくらいしか出来ない。

『お酒が合わなかったのかも知れないね。疲れていたのかな?』
ヤスカワが何食わぬ顔で言う。

『ちょっと…体調がわるくて……。今日は、失礼します』
まだ収まらない鼓動と震える体を堪えて、なんとか立ち上がる。
『伊野尾くん、ちょっと、大丈夫?』
俺のただならぬ様子に、心配げに野田が声をかける。

『ごめんね、野田。……ヤスカワさん、すみません。失礼します…。』
下げたくない頭を無理やり下げて、俺は店を後にした。

レストランのあるホテルを出て、取り敢えず歩く。
頭の中は恥辱と絶望で一杯だった。

あんな写真が世に出たら。

想像するだけで、心がどうにかなりそうだ。

勿論俺は、わけも分からずにイタズラされた被害者ではあるけれど。
そんな事で好奇の目に晒されたくない。

子供の頃の俺自身が憐れで、家族にも申し訳なくて。

何よりメンバーにどれだけ迷惑がかかるか。

それだけは、イヤだ。

メンバーに知られたくもないし、メンバーに迷惑をかけたくない。

どうしたらいい?







ついていないテレビを見つめて、ふぅ、とため息をつく。

あの時の事を思い出すと、まだ体が震える。

あれから何度もヤスカワから連絡があった。
俺は取り敢えず仕事を理由に、下卑た下心丸出しの誘いを何とか断っていた。

切り札はヤスカワが持っているが、俺自身の体をヤスカワの好きにさせるなど、死んでも嫌だった。

だから、仕事を辞めようと思った。

仕事を辞めれば、野田には申し訳ないけどCMの話も無くなるし、写真をネタに脅されても、一般人となった俺の事など、週刊誌などに旨味もないだろう。

何より、メンバーに迷惑がかからなくなる。

仮に写真が世に出てしまっても、俺が辞めた後であれば、グループへの余波など無いに等しい。

一刻も早く、事務所を辞めたい。
メンバーに迷惑の掛からないところへ逃げたい。

早く事務所を辞めなければ。

俺の頭の中は、あの時からその事でいっぱいだった。

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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした!精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たろう | 作成日時:2022年12月24日 20時

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