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ニヤニヤと嗤いながら、しばらくスマホを操作している。

『これ、何か分かるかな?』
スマホの画面を俺の方に差し向ける。
『最近の、私のお気に入りなんだよ』

画面に表示されているのは、人物の写真だった。
トイレの中か何処かで撮られたのだろうか。

『……っ!』

俺の強張った顔を見て、ヤスカワは満足そうに微笑んだ。

写真の人物は、子供の頃の俺だった。
Jr時代の俺の写真。盗撮だった。
でも、ただの盗撮ではない。


俺がJrに入って間もない頃、先輩たちの間で流行っていた遊びがあった。
今思えば、そのようなセクシャリティを持っていた先輩が先導したのか、それをからかって別の先輩が始めた遊びだったのか。
年下の後輩を呼び出して、服を脱がせて体を触ったり、逆に触らせたり。
遊びというにはあまりに下品で、冗談で済ますにはあまりにたちの悪いイタズラ。

一度だけ、名前もよく知らないような先輩にトイレに連れ込まれたことがあった。
結構年上の先輩数人に囲まれ、恐ろしくて言いなりになるしかなかった。
着ていた服を脱がされ、体を好きに触られた後、先輩のモノも触らされた。
何が面白いのか全く分からなかったが、誰にも言えない事だけは分かった。

幸い俺はすぐにJrの番組に呼ばれるようになったり、忙しくなって、それ以来その遊びに巻き込まれる事はなかったし、当初は少しショックを受けたものの、大きくメンタルに影響することもなく、その事も忘れてしまっていた。

たった今、その写真を見せられるまでは。

その、たった一度の時に、そこに居た先輩の誰かが撮ったのだろう。

明らかに俺とわかる、服を脱がされた男の子ともう一人、顔の写っていない先輩らしき人の姿。
いかがわしい事をしているのは一目瞭然だった。

口から変な叫び声が出そうで、思わず口元を押さえた。

写真に写る、何も知らない無垢な子供の頃の俺が憐れで、恥ずかしくて、無性に悲しかった。

全身の力が抜けていくような、それでいて怒りや恥ずかしさや悲しさで、全身の血液が沸騰するような。
激しい目眩がして、息が上がる。

『よく、撮れているよね』
俺の顔をピンチアウトする。
『伊野尾くん、この頃から可愛いんだねぇ』
口元を押さえたまま、何も言えずにいる俺の頬をざらり、と撫で回し、俺の顔を覗き込む。
『私は今の君のほうが勿論好みだよ』

嫌悪感で吐き気がする。
背中を冷たい汗が幾筋も流れ落ちて、震えが止まらない。
呼吸が、出来ない。

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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした!精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たろう | 作成日時:2022年12月24日 20時

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