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沈黙が続いて、気まずい空気が流れる。
それを破ったのは、普段はポンコツと言われている最年長だった。
「伊野尾。お前の気持ちは分かった。でも俺たちはやっぱり納得行かない。お前は随分前から考えていたのかも知れないが、俺たちがその話を聞いたのはここ数日の事だから」
伊野尾ちゃんは俯いて、膝の上で拳を握りしめている。
力が入りすぎて白くなっている手が、細かく震えていた。
「俺たちにも考えて飲み込む時間をくれ。出来れば、ちゃんと腹を割って話をしたい」
薮ちゃんが冷静な声色で伊野尾ちゃんに伝える。
伊野尾ちゃんは黙ったまま。
「いのちゃん…俺もやっぱり納得いかないよ。ちゃんと俺たちに話してよ。急に『辞めます、ごめんね』って。そんなん悲しいって」
大ちゃんが伊野尾ちゃんの袖をぎゅうっと掴んだ。
「伊野尾ちゃん」
黙ったままの伊野尾ちゃんの態度に、先程の苛々が蘇ってきた。
「俺たちの気持ちは無視なの？もう決めたからって、乱暴に結論だけ投げつけられて、ハイそうですかなんて、言えるわけないじゃん」
伊野尾ちゃん、何で黙ってんの。説明してよ。
「残される方の気持ち、アンタだって分かってるだろ？それなのに何でアンタが今度は俺たちにそれをするんだよ」
口から溢れる言葉は感情と一緒になって止まらない。
「涼介」
俺をたしなめる知念の言葉と、伊野尾ちゃんが消え入りそうな声で呟いたのはほぼ同時だった。
「………勘弁、してよ」
「……伊野尾？」
「………もう……、開放して。……おねがい……」
椅子に座ったまま、俯いて頭を抱えて、かすかな声で呻くように呟く。
「ほんとに………ごめんなさい」
「伊野尾ちゃん……」
いつも飄々としていて、本当に弱ったところを俺たちに見せた事などない伊野尾ちゃん。
こんなに小さくて儚い人だっただろうか。
「いのちゃん。ごめんね。ここ数日、色々あって疲れてるよね」
光くんが伊野尾ちゃんの背中に手をあてて、そっと摩る。
「今日はさ、いのちゃんの元気な顔を見たかっただけだから。それで十分だから」
優しく話しかけながら、背中を摩る手は止めない。
伊野尾ちゃんが微かに頷くのが分かった。
「……ありがと」
その声は消えるように小さく、震えていた。
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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした！精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2022年12月24日 20時
