6日目 ym ページ27
ミーティングルームの扉が開いて、おずおずと伊野尾ちゃんが顔を出す。
少し痩せたように見えるその顔色は悪くなかったが、表情は珍しく緊張感に満ちていた。
「いのちゃん！！」
待ってたよ！！と、大ちゃんがワンコのように扉に走り寄る。
「あ……の、本当に、今回はご迷惑おかけしました。ごめんなさい」
伊野尾ちゃんが部屋の前で頭を下げる。
大ちゃんに促されて部屋に入って来た伊野尾ちゃんの右足には、痛々しい包帯が巻かれていた。
「大丈夫なの？その足」
ひょこ、ひょこ、と右足を庇いながら歩く姿に、思わず声をかける。
「あ、うん。崖から滑り落ちた時に、捻ったみたいで。捻挫と肉離れだから、２、３週間もすれば大丈夫。痛みもだいぶマシだし」
「どっか他に、怪我は？」
「擦り傷とか打撲とかあったけど、助けてもらった人のトコで、だいぶ良くしてもらったから」
もう平気、と伊野尾ちゃん。
表情はまだ硬いけれど、にへら、と笑う。
雄也と大ちゃんが両方から支えるようにして、伊野尾ちゃんを椅子に座らせた。
知念と裕翔がすぐにそばに寄る。
口々にいのちゃん、いのちゃんと言いながら、この６日間の話を聞いていた。
崖から滑り落ちたこと。
気を失っていて、気づいたら日本昔ばなしの世界に迷い込んでいたこと。
その助けてくれた人にとても親切にしてもらったこと。
最初の数日は体がいう事をきかず、全く動けなかったこと。
電波も殆ど届かない僻地で、その為に俺たちへの連絡が遅くなったこと。
そしてまた、ごめんなさい、と頭を下げた。
迷惑かけて、ごめんなさい。
伊野尾ちゃん、何回頭下げんのよ。
普段へらへらしてる割に、この人、自分自身の事に対してはだいたいいつも容赦ない。
俺も結構ストイックとか言われるけど、伊野尾ちゃんのは何か、自身に対する自虐感が半端ない。
そういうとこ、実はあんまり好きじゃない。
もうちょい自分を認めてやっても良いのに、て思う。
ひと通りこの数日間の説明と、伊野尾ちゃんの無事をみんなで分かち合った後、ふと部屋に沈黙が差した。
いちばん、気になっていた事をきかなければ。
伊野尾ちゃんの退所の話を。
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たろう(プロフ) - ぽんたさん» コメントありがとうございます。私も病系をよく読んでしまいます。拙い文章読んで頂いてありがとうございました。 (2023年1月25日 20時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんた(プロフ) - 連載お疲れ様でした！精神的にも身体的にも弱った伊野尾くんが凄く好きでした。 (2023年1月25日 19時) (レス) @page49 id: 26174ade27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2022年12月24日 20時
