ライオン先輩と猫ちゃん (ページ5)

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あれから他愛もない話をして、奈々ちゃんはバイトに向かった。

ぼーっとしながら、相変わらず誰も来ない図書室で本を読む。

ちょっと眠くなってきちゃったな…

時計を見るともう17時半になる頃だった。

もうそろそろお兄ちゃんが迎えにくるはず…なんだけど…

私の意識はそこで途絶えた。

北「A？こんなとこで寝てたら風邪ひくぞ」

『ぇ…お兄ちゃん…？』

北「遅くなってごめんね。思ったより長引いちゃった。」

『あ…うん…』

なんとも歯切れの悪い返事。

お兄ちゃんは困ったような顔をした。

北「ほんとはこんなつもりじゃなかったんだけど…樹も付いてきちゃったんだよね…。」

樹「ごめんね、猫ちゃん、昼間のお詫びもしたいしさ」

『あ、はい…』

北「しょっぴーんちと近いから、必然的に俺らの家も近いのよ…」

逆に今までどうして会わなかったんだろう。

こんなに鮮やかなピンク髪を見かけたら絶対忘れないのに…

樹「寝跡ついてる…(笑)」

ふわっとバニラの香りがして、頬が温かくなった。

優しく微笑む樹先輩の顔が見えて、なんとも言えない気持ちになった。

むに。

『えっ』

樹「あんま無防備に触らせない方がいいよ？」

『いひゃいれす…』

樹「んは、可愛い。」

頬を撫でられた流れでつままれた。

北「樹、俺の妹になにしてんの。」

樹「あぁ、わり、可愛くてつい(笑)」

北「あんまりいじめないでよ、キャパオーバーしちゃってるから」

『お兄ちゃん。』

思考回路が停止していたが、必死に頭を働かせて一目散にお兄ちゃんの背中に隠れる。

シスコンって言われてるお兄ちゃんだけど、こんなにお兄ちゃんから離れられない私もブラコンかも。

樹「やっぱまだ懐かねぇな(笑)」

北「そう簡単にうちの猫ちゃんは懐きません。」

『やめてよ、』

北「はいはい、Aちゃんね、」

人見知りを気にしている私はどうしても猫ちゃんと言われるのがあまり好きではない。

樹「その顔も、ほんと猫ちゃんみたいだね。」

『…お兄ちゃん帰ろう』

北「ん、帰ろっか」

樹「おぉーい無視すんな松村ぁ！(笑)」

北「樹うるさいよ、嫌われるよ」

樹「…冗談に決まってるじゃん？」

樹先輩といると、予想外のことが多すぎる。

頭も撫でられるし、頬も触られた。

けど自然と、嫌な気持ちはなかった。