ライオン先輩と猫ちゃん (ページ35)

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樹「猫ちゃん、お昼いこ」

『はーい』

駆け寄る私の姿を見て、少し眉間に皺を寄せた先輩。

樹「…それ猫ちゃんのじゃないよね」

『体操着ですか？』

樹「森本って…慎太郎？」

『忘れちゃって…暑いからって貸してくれたんです。』

私は小柄な方だから慎ちゃんの体操着は
ぶかぶかだから袖を捲っている状態。

樹「…それ脱げる？」

『えっ？』

樹「待ってて…すぐ戻ってくる。」

焦ったように引き返すとあっという間にいなくなった先輩。

私の頭にはハテナがたくさん浮かんでいる。

あっという間に戻ってきた先輩。

息を切らしていて、肩が上下に動く。

『あ、の、先輩…？』

樹「俺の。」

『はい？』

樹「慎太郎のじゃなくて俺の着て」

半ば強引に体操着を脱がされ、先輩のをかけられる。

またバニラの匂いがして
慎ちゃんのとは違う匂いに心臓がうるさくなる。

樹「しんたろー！」

慎「んー？」

俺のかしたから返す〜なんて、勝手に話を進める先輩。

私はそんな先輩と慎ちゃんの会話が
遠くに感じるほどドキドキしていた。

屋上行くよーって歩き出す先輩。

ぼーっとしながら後ろをついて歩く。

薄暗い階段を登って、先輩がドアを開けてくれる。

樹「先どうぞ」

『あ、ありがとうございます』

屋上に入ろうとしたら、先輩の匂いがさらに強くなった。

背中に温かい感触。

樹「これじゃ手でないね」

後ろから私を包み込むように手を取って
袖を捲ってくれる先輩。

所謂バックハグ。

なに、この状況…

樹「猫ちゃんちっちゃいから」

クスリと笑う先輩の声が直接耳に届く。

くすぐったくて、甘ったるくて恥ずかしい。

樹「これでよし」

『…ありがとうございます』

捲ってもらった袖を見つめる。

先輩のジャージで。先輩の匂いで。

顔が赤くなるのが嫌でもわかった。

それに追い討ちをかけるように手をギュッと繋がれるから。

『ちょっ…』

樹「んは、照れてんのちょーかわいい。」

目尻に皺を寄せて笑う先輩の顔がうっすらと見える。

余裕のある先輩と余裕のない私。

先輩は他の女の子にもこんなことをしていたんだろうか。

誰かわからない相手にモヤモヤして
思わず手を強く握ってしまった。

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