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■43 ページ10

お詣り。

聖陽教の俺がそんなことしていいのか。いやそもそも神を信じてなんかいないが。

しかし一応Aに習って参拝した。





石でできた急な階段を上り、まず縁結びのお詣りをする。


ちらり、と横目でAを見て目を閉じる。

Aの横に、誰か男が立つ。そんな未来。

俺はどうしてかそこで目を開けた。凄く心がむかむかする。

腹の底に、何かどす黒いものが広がっていく感じだ。

なんなんだ、これは。


そんな俺の様子を知ってか知らずか奥に進んだAは健康についての占いのようなものもするらしい。

Aが初めて会話の中で俺の眼帯について触れたが、すぐに謝ってきた。少しテンションが上がっていたのだろう。らしくない。

しかし眼帯について言及されたことは、そんなに嫌な気分にならなかった。



黙ったままでいると、Aは勝手に話を進め、俺の手を握って紙に言葉を書き始めた。

また、胸の辺りが締め付けられるような感覚に陥る。それと同時に先程のどす黒さは嘘のように無くなった。

一体なんなんだ。

そのままAは紙を水に浮かべるがなかなか溶けない。


「(やはり、俺のような人間は)」


そう思った瞬間、Aが自らの紙を重ねて浮かべた。そのまま紙は勢いよく沈みながら溶けていった。

「!!」

『これで安心ね。さ、次はどこに行くか決めながら坂を下りましょうか。』

「……なんで、」

『ん?』

「なんで、紙を重ねた。お前たちはこの神を信じているんじゃないのか、俺の世界で、神の占いに人間がなにか影響を与えるなんて神への冒涜になる。」

『…それはね、52。教え導いてくれる神なんて居ないからよ。』

「は、」


神は、存在しないと、言い切ったのか。

ならなぜ、お前たちは神に願うんだ、

なぜ。

『神様や仏様への参拝ってね、ほんの心の後押しと願望の吐露に過ぎないのよ。なにか迷ったとき、決断しなきゃいけないとき、そんなときの<あと一歩>を見えない存在をつくって頼るの。でも神様仏様は、間違いなく人の心の拠り所よ。だから居ないとは言い切れない。でも<教え導いてくれる>神様や仏様は絶対に居ないわ。』

Aは両手でしっかりと俺の手を握って続けた。



『だって、決めるのは自分自身ですもの。』

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作者名:ばんぶー | 作成日時:2020年12月6日 4時

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