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生八つ橋をいくつか買って、52の所へ戻る。

『おまたせ』

「いや、大丈夫だ。それより次は何処へ行くんだ。」

『ふふ、ここまで来たなら清水寺にも行きましょうか。』

「寺?目の前のあれか?」

『そうよ。ほら。』

はぐれるといけないから、とやっぱり腕を引くA。

入場料を払い、清水の舞台に向かう。

舞台にはやはり大勢の観光客がいた。

Aは一等景色の見える所に52を連れていく。

『久々に来たわ…いい景色ね。』

「………凄いな。」


舞台からは、京都の街並みがよく見える。低い建物ばかりだが、時たま寺や神社が見える。これも京都らしさだろう。

『52。』

「?」

パシャ、

『ふふ、可愛い顔をしてるわね』

「!写真撮ったのか!消せ!」

『なんでよ良いじゃない』

「良くない…!」

そうやってしばらく舞台でじゃれあった。結局52は写真を消せなかったようだが。

『さて、お詣りしましょう。』

「……」

『……どうかしたの?』

「……いや。」

少し表情の固くなった52を気にしながらも参拝をするA。それに習い52も参拝した。

舞台を過ぎると今度は左手に急な階段が出てきた。

こっちも、とAは再び52の腕を引く。

「……」

縁結びを祈ってのお詣りをする。

そのまま奥に進み、木の机にある人形(ひとがた)の紙に、ボールペンで健康についてAは書き込み始めた。

『≪まだまだ健康でいられますように≫と。52も何か書く?』

「何について書くんだ?」

『健康のこととかかしら。その眼帯の、ごめんなさい。失言ね。』

「いや、いい。俺は特に健康について願うことはない。まず俺はこちらで言う英字しかかけない。」

『……ね、心は?心は健康?』

「心の、健康、……」

『ほら、』

Aは半ば52に無理矢理ボールペンを握らせ、上から自身の手を重ねて字を書き込ませた。

≪心が健康になりますように。≫

「っ、おい、」

『ほら、じゃあ次はそれをこの水に浮かべるの。紙が溶けるのが早いほど願いが早く叶うのよ』

52の手に手を重ねたまま有無を言わせず紙を水に浮かべる。


『ん、少し溶けるのが遅いわ……』

「……」

『…………えいっ。』

そんなこと知らないとばかりに、Aは自らの紙を52のものの上に重ねて置いた。


『あ、ほら!両方とも溶けたわ。これで安心ね』

そう言って52を振り返ると心底驚いた顔をしていた。

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作者名:ばんぶー | 作成日時:2020年12月6日 4時

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