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52と暮らし始めて、もう1週間。


私との距離感は相変わらずだ。一週間も一緒にいたら、もう少し近づいても良いものだと思うのだけれど。


『52、今日は早めに仕事上がれるから買い物して帰ることにするわ。何か欲しいものはある?』


「……特に何も」



なんだか最近、52のこの態度が野良猫のように思えてしまう。なかなかなつかない感じとか。そうなるとなつかせたくなるのよね。



『……甘いものは好き?』



「は?」



『ケーキとか。』



「………あまり、今まで食べてこなかったから、なんとも。」



『そう、じゃあ帰りにケーキ買ってくるわ。52の歓迎会しましょう。』



ぴく、と眉が動いた。無感情のような深い紫の目がじっ、と私を見つめてきた。相変わらず綺麗。



「……なんでそこまで俺に関わろうとするんだ」


『それはあなたが良い人だからよ。とても綺麗な目をしているし。』


それを聞いて今度こそ彼は眉をひそめた。




『遅くても19時頃に帰ってくるわ。それじゃ。』




___________________________________


今更だが私は社会人である。若い人ばかりの会社だから、今時の社会人らしく、社内の付き合いはとても淡白だ。だからこそ私はここに入社したのだが。



そして定時で上がれる。素晴らしいと思う。今時こんなにホワイトなんて。





17時。





『お疲れ様です。』





買い物して、駅前でタルトでも買って帰ろう。52が生クリームダメかもしれないし。


そうだ、お酒も買っていこうかしら。つまみも買っていこう。



こんなにうきうきしながら家に帰るのっていつぶりだろうか。綺麗な彼とならルームシェアも悪くないかもしれない。



_____________________________________

『ただいまぁ〜』


よいしょ、とリビングに買い物袋をおろす。


「随分重たそうだな」


『色々買っちゃったのよ。しまうの手伝ってくれる?』


頷くわけでもなく、彼はこちらに来てくれた。









『夕御飯、今日も大丈夫だったかしら』

「ああ。問題ない」

あれからアレルギーがあるか分からないので食後の身体の変化はこまめに聞いているが大丈夫そうだ。大体のものは食べれそう。


『じゃあ食後のケーキね。生クリーム嫌いだとあれだと思って、タルトにしたわ。』









取り出したタルトを見た彼の瞳は、この一週間で一番輝いていたかもしれない。

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作者名:ばんぶー | 作成日時:2020年12月6日 4時

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