2.昔から変わらない ページ4
「…おい、寝たのか」
試しにクランクの肩をゆすってみるが、反応は全くない。その代わりに、すぅすぅと安らかな寝息を立てている。昔からこういうやつだ。多分。
このまま帰るわけにもいかない。なぜなら、明日の入学式に、風邪でも引いてこられたら困るからだ。こいつはただでさえうるさいのに、咳や鼻を啜る音まで足されたら、たまったものではない。
「はぁ…仕方ないな」
店にある4畳程の物置き場にシングルベッドがあった。おそらくクランクはいつもここで寝ているのだ。こいつは片付けが苦手なのか、脱ぎっぱなしの服や、開いたままの本。謎の工具など、いろいろなものが散乱していた。何かを運ぶのはもう懲り懲りだが、クランクを椅子から上手いこと持ち上げた。持ち上げた体制が姫抱きのようになる。
「…軽い」
もしかしてこいつ、レーズンバターしか食わずに生活しているのか?と思うほど軽かった。ベッドの近くに来たため、そっと手を離し、そこらへんにあった布団を乱雑にかけた。ベッドサイドの棚に飾ってある写真は、卒業式の時2人で撮ったものだ。思わず手に取り、じっと見る。とても懐かしくて寂しいような気持ちに襲われた。この時はよく2人で空き教室を実験で爆破などしていたな。
「…ふ」
思わず口角が上がった。明日の入学式に備えて、俺も早く帰って寝なければ。そう思い、店を後にした。
「…ぅ……」
眠い目を擦りながら身体を起こす。今は何時だろう。…そうだ。昨日は2時くらいにデイヴィスが来て…それから全く記憶がない。寝落ちてしまったのだろうか。
「入学式…うーん…」
よし、二度寝でもするか。俺が行かなくても大丈夫だろう。どうせ座ってるだけだし、店の宣伝も別に良いし。そんな思考を持った瞬間、ドアが勢いよく開いた。
「おい、クランク…今日は入学式だぞ。」
「無理…先行っといて…」
「甘ったれるな。早く起きろ」
そう良いデイヴィスは俺の被っていた布団を剥がした。つらい。最近少し肌寒くなってきたので、余計に。まあ、さっさと起きろっていう話なんだけどね。
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作者名:ユウ | 作成日時:2023年7月2日 6時