9.本日2度目 ページ13
『実はですね…掃除を放って大食堂のシャンデリアの上に逃げたグリム君を、同じ寮のデュース・スペード君が捕まえようとして…それで何を思いついたのか、エース・トラッポラ君を魔法で投げたんです……このあとは、想像できますよね?…』
デイヴィスはもう叫び声を出す気力も無く、只々ため息を吐いていた。胃が痛いのか、腹をさすりながら。
『それでですね…シャンデリアについていた魔法石まで割れてしまったので、期限を明日の朝にして、彼らには同じ性質の魔法石があるドワーフ鉱山にとりに行ってもらっています。…まあ、本当に行っているかどうかはわかりませんがね。』
「…なぜ退学処分にさせないのですか?」
デイヴィスが突っ伏していた体を起こして学園長に問いかけた。俺もそこが何だか引っかかっていた為、さらに耳を澄ませた。
『彼ら…特にデュース・スペード君が、なんでもすると仰っていたので、ならば行っていただこうと思いまして。…都合がいいと言うのもありますがね。』
「…成程。つまり魔法石を取ってこられたら、退学処分にはならないと?」
『そういうことです。…諦めずに取りに行っていたら、の話ですが。』
「どうでしょうね…まあ、明日の朝を待つとしましょう。」
『そうですね。…では。』
「はい…」
ピッ、という電子音と共にまたもやデイヴィスは机に突っ伏した。もうため息をつく気力すら無くなったのか、完全に沈黙を続けている。
ポケットからマジカルペンを出し、少し回すと胃薬が掌の上に登場した。そのままデイヴィスの目の前に差し出す。そこらへんにあったコップにピッチャーで水を入れて隣に机に置く。
「はい、どーぞ。…苦労人は大変だねぇ。」
「…昔からお前がいるだけで苦労が付き添ってきたがな。」
「現実を楽しもうよ。異常だとか、前代未聞だとか。たくさん面白い話ができるよ。ジェイド君もこう言う事言ってたし。」
「お前は随分と楽観的だな…はあ、あの駄犬をどう躾けるべきか。」
「いつも思うけど、躾って何?暴力?」
「違う…叱るだけだ。」
「よかった。」
デイヴィスはいつも指示棒を持っていて、前髪を上げていて、吊り目だ。初めて見ると怖そうな印象だから、みんな躾と聞くと、カタギじゃない事をしている感じがするのでは。
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作者名:ユウ | 作成日時:2023年7月2日 6時