8.駄犬 ページ12
「…大変申し訳ない。…あとでしっかり躾けておきますので。」
『彼らも反省しているようですし、もうこのような事は起こさないでしょう。なので、窓拭き100枚で許してあげました。私優しいので！』
学園長の「私優しいので！」は全く信用していなかったが、今回は流石に心が寛大すぎる。
正直、印象のゲージのMAXが10だとしたら、今の対応で8にはなった。おめでとう。
しかし、学園長の優しさとは対照的に、デイヴィスの眉間の皺はどんどん寄っていくばかりだ。
「はい…はい…失礼します。」
電話が終わったデイヴィスが頭を抱えて机に強く突っ伏した後、「はぁ……」と流石苦労人といったため息を吐いた。…このあと何か奢ってやろうと思う位、流石の俺でも同情した。
「…入学早々…俺の胃を殺す気だな…この駄犬が…」
「んふふ…NRCの生徒って、なんでみんなこうなんだろうね？」
「知らん…はあ…先が思いやられるな…」
「そっちの方が、楽しくて良いでしょ」
「それはお前だけだ。…はあ、全く。」
少しだけデイヴィスの口角が上がったところで、授業準備をしようと椅子から立ち上がった。
一瞬だが、あの後直ぐに準備をして、1〜6時限目まで授業をした。放課後、デイヴィスをうちに連れて行って、同情の珈琲とレーズンバターサンドを一緒に食べている時のことだった。
不意に、デイヴィスのスマホからの着信音。電話の受信名を見ると学園長だ。何だか嫌な予感しかしない為、デイヴィスの顔をチラリと覗いた。
やはりデイヴィスも俺と同じことを思っている様で、眉を顰め、冷や汗を一粒垂らしていた。
まあ、何度も学園内で重大なトラブルが起きるなんて、そんな事はないだろう。
「…もしもし。どうされましたか？」
これを言うのは本日2度目だが、暫く耳を澄まして会話を聞いていると、デイヴィスが急に「は！？」という大きな声を出して固まった。
「くはー…」
俺は情けない声を出しながら心の奥底で、「やっぱり、ここはNRCだもんね」と思った。
…わかっていた事？そんな事はない。多分。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユウ | 作成日時：2023年7月2日 6時
