7.期待外れ ページ11
小鳥の囀りで目が覚める。昨晩は見事な寝落ちをしてしまったので、アラームをかけていない。まずい、と反射的に体を起こし、スマホに表示された時間を見たが、いつも家を出る時間より少し早かった。一安心して二度寝をしようと思ったが、昨晩は風呂に入っていないことに気がついて、適当に身支度を済ませてうちから出た。
うちにはシャワールームがない為、遠くの教員寮へ魔法で移動した。眠気を誤魔化すように目を擦りつつ、廊下を歩く。この時間だとあまり…いや、全く人がいない。デイヴィスも流石にこの時間は寝ているだろう。バルガス先生は、トレーニングで起きているかもしれないが。
シャワールームに入ると、やはり誰も居なかった。誰かいた場合は部屋に戻って、魔法で全身を洗おうかな。と言うか、今それをやった方が楽なのでは？…まあいいや。
15分程経ち、シャワールームから出た。タオルで体を拭き、手櫛で髪を整える。髪を乾かすのは億劫だから、魔法を使って乾かした。このような時に、改めて魔法は便利だなぁと思う。学生の頃は無駄だと思っていたことでも、大人になって意外と役に立つものなのだ。きっと。
くだらないことを考えていたら、職員室についた。デイヴィスはもういるだろうか。いたら驚かしてやろう。キィ、と少し軋むドアを開け、足音を消した。デイヴィスの背後にすす、と回る。大声をだして驚かす前に、デイヴィスがこちらを向いてしまった。
「…おい、驚かすのはやめろと何度も…」
デイヴィスはいつも期待外れな反応をしてくれるんだ。自然と笑みが溢れる。そんな他愛のない会話をしていると、デイヴィスのスマホから着信音が鳴った。
「…もしもし。……ああ、学園長。どうかされましたか？」
電話をかけてきたのは学園長のようだ。暫く耳を澄まして会話を聞いていると、デイヴィスが急に「は！？」という大きな声を出して固まった。
「…今何とおっしゃいましたか？」
『だから先程、貴方のクラスのエース・トラッポラ君と、デュース・スペード君がハートの女王の石像を…』
「は！？」
デイヴィスはもう一度大きな声を出して固まった。それも当然だろう。デイヴィスと俺もよくヤンチャをしてたとはいえ、これ程のことはしたことがないし、そもそも入学1日目で自分の生徒がやらかしたと訊いたら誰だってその反応になる。
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作者名：ユウ | 作成日時：2023年7月2日 6時
