忘れたい恋心は日に日に募り、大きな愛へと変わる (ページ48)

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episode48 ページ48

〜アルバート〜

Aの辞書に“厚意”はあっても“好意”はない

私の嫉妬や独占欲には気付くはずがなかった

アルバート｢帰ろうか｣

｢2〜3日、泊まるんじゃないの？｣

アルバート｢そのつもりだったんだけどね｣

日が暮れて暗くなってくると、Aの手が震えている

それが無意識である以上、ここに留まる理由がない

犯行は明かりの消えた夜だったのかもしれない

だから………

Aのトラウマは私が思っていたよりも深い

アルバート｢帰ろう。僕達の家に｣

｢僕の家、じゃないの？｣

アルバート｢僕達、だよ｣

あまり意味を理解していないAは首を傾げた

あの家を自分の家として見ないのは、いずれ出て行くからだろう

ずっといていいと言っても首を縦に振ることもない

モラン『告白しろよ』

して、どうする

私はAが背負ったもを何も知らないというのに

Aがその辺と貴婦人と同じように空っぽの人間なら、こんな風に迷うことはなかった

帰りの汽車の中は居心地が悪かった

なんと声をかけたらいいか分からなかった

｢アルバート様。気分を害してるなら私、席移ろうか？｣

アルバート｢僕は別に……。どうして急に？｣

｢さっきからずっと、難しい顔をしてシワが寄ってるから｣

そう言って笑いながら細い指が眉間に触れた

｢アルバート様。言葉は口にしなければ何も伝わらないよ｣

立ち上がって本当に行ってしまおうとするその手を掴むと、咄嗟のことにバランスを崩して老人にぶつかってしまった

アルバート｢すま……｣

｢ごめんなさい！！大丈夫ですか！？｣

瞬間、ハッとした

私は“また間違えた”

バラまけた荷物を一人で拾う姿を、手伝いもせず見ているだけ

老人｢ご親切にどうも｣

｢いえ。こちらの不注意なので｣

老人｢お優しい人。私が君ぐらいの年に読んでいた本なんだけどね。よかったらどうぞ｣

｢は、はい。ありがとうございます｣

プレゼントなんて初めて貰うわけでもないだろうに、嬉しそうにはにかんだ

物をあげる事はあっても貰う事はあまりないAにとっては貴重なんだ

｢アルバート様。貰った｣

アルバート｢見てたよ｣

｢貰った｣

嬉しいのか二度も言った

それが可愛すぎて直視できない

Aは多くを望まない

誰かの幸せを願っては、いつだって自分以外の人を想う

席に座り直しては、本の表紙をそっとなぞった