忘れたい恋心は日に日に募り、大きな愛へと変わる (ページ4)

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episode4 ページ4

〜アルバート〜

アルバート｢すまなかったA｣

｢いえ……｣

今のAは記憶喪失というもので、かろうじて自分の名前を覚えてる程度

当然、過去に出会った私のことは覚えているはずもない

記憶(自分)を取り戻すべく、色んなところを渡り歩いてこのダラムに辿り着いたらしい

アルバート｢A。君の家族を殺した犯人はまだ見つかっていない。不用意に一人でいるのは危険だ。記憶が戻るまでこの屋敷にいるといい｣

モラン｢お、おい！お前それは……！！｣

アルバート｢“問題”ないだろ？ウィリアム｣

ウィリアム｢ええ。もちろん｣

アルバート｢そういうことだA。遠慮なくこの使用人達をこき使ってくれて構わない｣

モラン｢おいこらテメー｣

アルバート｢部屋は……そうだな。僕と一緒でいいかな｣

モラン｢いや、ダメだろ｣

｢私はどっちでも。ご迷惑でなければ｣

冗談のつもりだったのに

断られないということは、警戒されてないと捉えてもいいのだろう

｢屋根さえあれば私はどこでもいいので｣

アルバート｢…………………………。参考までに聞かせてくれないか。今日までどんな風に過ごしてきたのかを｣

｢お金は食べ物に当てなければと思い、基本は外で寝るようにしてましたけど｣

アルバート｢っ……それは……｣

ウィリアム｢それは賢い選択ではありませんね。Aさんは女性です。確かに生きることに食は大切ですが、自分の体に傷をつけていい理由にはなりません｣

ボンド｢それに階級が低い(男爵)といっても貴族なんだし、抵抗とかなかったの？例え忘れていても体に生き方が染み込んでるんじゃない｣

｢仮にそうだとしてもそれは……同じ人間である彼らや彼女らを、それこそ下に見ていい理由にはなりません｣

変わっていなかった

記憶を失っても、AはAのままだ

それがどうしよもなく嬉しくて、泣いてしまいそうになった

｢それで、私は皆さんを何とお呼びすればいいですか。お話しを聞く限りではモリアーティ家は伯爵位で私は男爵位。階級でいえば……｣

ウィリアム｢ふふ。面白いですね。人は皆、平等だと謳いながらも、その平等にご自身が入ってないとは｣

アルバート｢Aの好きなように呼んでいいんだよ｣

Aは顎に手を当て、少し悩んだあと

｢では、アルバート様、ウィリアム様、ルイス様｣

“やはり”様なのか

分かっていたとはいえ、ガッカリ感は隠せない