忘れたい恋心は日に日に募り、大きな愛へと変わる (ページ26)

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episode26 ページ26

〜アルバート〜

マイクロフト｢ほう……。コーヒーに砂糖をそんなに入れる人は初めて見た｣

5杯目を入れる手が止まった

｢だって……苦い……｣

シュンと口を尖らせて落ち込んでしまった

可愛いな

アルバート｢Aの好きな甘さにしたらいい｣

｢でも……｣

ホームズ｢クソ兄貴の言葉なんて無視しろ｣

｢仲良いですね｣

ホームズ｢どこがだよ！？｣

｢兄弟喧嘩するとこ？｣

マイクロフト｢はは。本当に面白いお嬢さんだ。彼が夢中になるのもうなづける｣

｢彼？｣

マイクロフト｢こっちの話しだ。それより何か食べないか。私が奢るよ｣

｢それなら先に注文してます｣

マイクロフト｢先に、ねぇ……｣

｢ご、ごめんなさ……。アルバート様だけかと思ってたので｣

アルバート｢僕だけだと、僕に奢ってもらうつもりだったのかな？｣

｢そういうわけじゃないけど｣

アルバート｢それでいい。Aのことは全て、僕が面倒見るよ｣

｢アルバート様は私が何歳に見えてるの｣

アルバート｢素晴らしい女性だよ｣

｢答えになってない｣

アルバート｢事実を述べただけなんだが｣

小さなため息をついたAはカップを落とさないように両手で持ちコーヒーを飲んだ

まだ苦かったのか、魂が抜かれたように動かない

敢えてそれには全員が知らん顔をした

カップを置くAの目にはうっすらとだが涙が浮かんでいて、雷に打たれたような衝撃だった

Aが可愛すぎて辛い

家でも今度、コーヒーを出してみよう

とびきり苦いやつを

どんな反応をするのか楽しみだ

店員｢大変お待たせ致しました。こちら、マドレーヌでございます｣

｢ありがとうございます｣

容器を受け取ったAはさっきまでの苦悶の表情を隠して笑顔だった

ホームズ｢何でいま受け取ったんだ？｣

｢だってここまで運んできてくれたんですよ？｣

ホームズ｢それが仕事だからだろ｣

アルバート｢Aは変わらないね。昔も今も｣

相手が誰だろうと感謝の念を忘れない

自分の為に“何かをしてくれた人”にはいつもそうだ

物を売ってくれた商人

馬車が通る際に避けてくれる道行く人

自分を頼ってくれる子供達

どんな些細な事にでも感謝を伝えた

一度だけ、言い過ぎたらその言葉は重みを失くすのではと問いた事があった

でもAは言った

言葉(想い)は相手に伝わらなければ意味がないのだと