2 ページ35
その言葉を聞いて、Aの身体を抱き寄せる。
「大丈夫だ。別れる気なんてさらさらない」
震える彼女の肩を抱きAの髪に顔をうずめるといい香りが鼻孔をくすぐった。
「君がヤミと付き合っていた時は諦めていた。
だけどあいつと別れて、やっと君を恋人にできた」
手放しなどしない。
グッとAを抱く力が強くなる。
「Aが嫌々私と付き合っていたのではと不安だったが、君も私を好いてくれてると聞いて安心したよ」
「……ごめんなさい。私の勘違いで不安にさせてしまって……」
抱きしめていた身体を離してまっすぐと見つめられAの頬に添えた私の手に彼女の手が重なる。
「よく考えたら、君から好きと言われたの初めてだな」と笑うとAも恥ずかしそうにニコリと微笑んでくれる。
やはりAは笑顔が一番可愛い。
合図があったわけではなく自然と唇が重なる。
唇が離れAと目が合う。
親指で彼女の下唇をなぞるとはにかむように笑いかけられる。
うっっ、おさえろおさえろ〜、ここは実家だ〜！
ソファに座っているのでその気になれば押し倒せるシチュエーションだがぐっとこらえる。
姉上もいつ帰ってくるか分からない状況だしベゼットや他の使用人も来るかもしれない。
それに病み上がりなのにこんなにさめざめ泣いて消耗しているAを休ませてやらなければ……と自分の頭の中で理由をつけて気持ちを抑えることに成功した。
そんな私の葛藤を知ってか知らずかAは私の肩に頭を猫のようにすり付けるように預けてきたので、頭を預けられていないほうの手で頭を撫でてやる。
彼女は泣きつかれてもう寝入りそうだ。
姉上の言っていた拗れが解決してよかった。
あの人には散々かき回されたが最終的にはいいように落ち着きそうで何よりだと思う。
勢いでだが結婚のことも口にしてしまったが、Aの今のこの状況だと話し合うのはまたおいおいになるだろう。
今はゆっくり寝かせてやろう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あわわ(プロフ) - 頃音様、いつもありがとうございます！長々と申し訳ないですがまだまだ続きそうです。できる限りの１日１話更新ペースで頑張っていきたいです。頃音様もお身体にお気を付けて！これからもよろしくお願いします！ (2019年11月2日 18時) (
レス) id: 7a4853944d (このIDを非表示/違反報告)
頃音(プロフ) - リアルでもお忙しいかと思いますがこちょう様のペースで出来上がっていく物語を陰ながら応援しております！最近は大分寒くなってきたようですので、お身体を崩される事もあります。お気をつけ下さい。 (2019年11月2日 7時) (レス) id: 2fb5f4f14e (このIDを非表示/違反報告)
頃音(プロフ) - 続編おめでとう御座います。前回のコメント返信でヤミさんとの関係の清算が第三章くらいで今はまだ第一章と読んでホッとしました。お話を拝読している時は終わりが近いのかと勝手に思っていたので今後も続くと知って楽しみが増していきます。→ (2019年11月2日 7時) (レス) id: 2fb5f4f14e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こちょう | 作成日時：2019年11月1日 21時
