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「せんぱい!生ひとつ」









あれ、お前さっきまで ..


と言わんばかりの顔をする先輩に


笑顔でもういっかい。









「生ひとつ!」





「ふっ」





「なんすか、鼻で笑って」





「Aちゃんってほんとに容赦ない」





「.. なにが?」









仕事の早い先輩が


私の目の前にどんっ、とジョッキを置く。





それをすぐ持ち上げて


軽く頭を下げてから飲む。





体の中をすーーっとビールが通る。





今日も頑張ってよかった、って


20歳になって手に入れたこの喜びに


この瞬間に感謝する。









「さっきまで一緒に働いてたやつが

自分の目の前で飲みだしたらむかつく」





「それは上林選手だけです、あの先輩優しいもん」





「あ?俺も優しいし」









野球選手に対して、というか


それ以前にさっきまでお客様だった人に


こんな舐めた態度とってるの、


どうなの?って。






普通ならそうなんだろうけど。









「上林選手相変わらず兄貴そっくりです」





「またそのはなし?」









だからついつい、


距離感が分からなくなっちゃうのかも。





.. 完全にこっちの都合だけど。









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作者名:淡埜 | 作成日時:2019年5月11日 0時

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