06.滲む想い ページ6
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静まり返ったグラウンド。
太陽はどこかに姿を隠していて、仄暗い空には茜色だけが煌めいてた。
重ねてあるビブスを大きなバックに詰めて、グラウンドを見回す。
フラッシュバックするのは、やっぱりキラキラした大毅。
ボールを追いかけ続ける真っ直ぐな笑顔も、あの子にだけ見せる特別な笑顔も。
どちらも私の心をぎゅうっと掴むように、苦しくさせる。
本当に私は、素直じゃなくて。
一番伝えたい事を、一番伝えたい人には言えずに。
幼馴染だからって。
あほ、って長く伸びた自分の影に小さく呟いた。
その視界の端で、もう一つの影が揺れる。
そっちを見れば、こっちをじっと見て少し首を傾げてる大毅がいた。
「A、お疲れさん！」
「お疲れ、どうかした？」
「忘れもん」
そう言ってベンチの上にある何かを掴む。
それは何か小さなもので、ここからは見えなかった。
「なあ、何があほなん？」
「…あ、いや、さっき転びそうなってそれであほやなあって、」
「ははっ、確かにあほやな」
そうだ。
この調子でいつも通りに、自然に。
ただ幼馴染の大毅が、目の前に居るだけ。
そう、居るだけ。
大好きな、君が。
「転けんなよ」
そう言って軽く手を上げると、グラウンドの外へ歩いていく大毅。
左手には小さな忘れ物が握り締めてある。
それが何なのかに気付いた時、胸が苦しくなって、その背中を見ていられなくなって、俯いた。
色褪せたそれは、私が小学六年生の時、大毅の引退試合の決勝の日に渡した、手作りのお守り。
今見れば下手で、神社のちゃんとしたお守りの方がいいのに、渡した時の大毅は眩しすぎる笑顔を見せてくれて、その後シュートを決めて優勝した。
未だに試合の時に必ず持ってるとか、やめてよ。
小さくなった大毅の背中。
もう一度、と顔を上げて視界に入ったのは、並んで歩く二人分の小さくなった背中だった。
諦めさせて、嫌いにならせて。
何で、叶わないって分かりきってるのに。
ポタリ、と地面に零れてすぐに乾いた滴。
それは悲しみで、溢れた想いで、後悔で。
それが全部、頬を伝って一緒に流れて、消えていってしまえばいいのに。
茜色のグラウンドが少しずつ、
淡い蒼色に染まっていく。
脆くて、儚い想いが、そんな空の色を滲ませた。
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Hama(プロフ) - 凜憧さん» コメントありがとうございます！まずは代表して私が返信させて頂きます。私も含め全員綺麗な表現にこだわりつつ切なさ重視で書いてると思うので、その言葉がとっても嬉しいです！是非最後まで応援してもらえると嬉しいです、よろしくお願いします。 (2018年2月2日 23時) (
レス) id: 140c01c743 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - コメント失礼致します。切なさを表すような表現工夫が個人的にとても好みな為、凄く続きが気になります。皆様の作品、全て見させていただきました。どれも面白くて大好きになりました！更新頑張って下さいね (2018年2月2日 19時) (レス) id: ba266bdcdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みなららやん x他2人 | 作成日時：2018年2月1日 21時
