17.残ってる ページ17
．
ぽつ、ぽつ、と花火の音が聞こえる。
流星が浴衣の裾を離し、俯いた。
「ごめん、なんでもない」
「そっか、」
いつの間にか花火は終わっていたみたいで
ぞろぞろと人が出口へ向かっていく。
「終わっちゃったね」
「うん」
大毅はもう、帰ってしまっただろうか。
火薬の独特の匂いが鼻を掠める。
この匂いも、さっきまで見ていた景色も、
この空虚な空も、
全部全部、大毅とだったらよかったのに。
「あ、望」
「おーい！」
流星が、入口を見つめる。
そこには三人がいて、望が手を振っている。
「きれーだったね！」
「うん、」
知夏が楽しそうに笑っていても、
釣られて笑えそうにもない。
みんなと別れた後、
下駄の音が響く、寂しい暗い道を歩いた。
空を見上げると、星が見えて。
さっきの花火が走馬灯のように蘇った。
大毅と如月さんの背中まで、あの、仲睦まじい二人の背中まで蘇った。
かき消したい。忘れたい。なのに
涙が溢れて、あぁ私って無力だなって。
大毅の笑う理由が私じゃなくても、
他の人に向けた笑顔でも、
笑ってくれただけで、嬉しかったのに。
大毅の声がしただけで、私の世界が明るくなったはずなのに。
どうしてこんなにも、苦しいんだろう。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 269人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Hama(プロフ) - 凜憧さん» コメントありがとうございます！まずは代表して私が返信させて頂きます。私も含め全員綺麗な表現にこだわりつつ切なさ重視で書いてると思うので、その言葉がとっても嬉しいです！是非最後まで応援してもらえると嬉しいです、よろしくお願いします。 (2018年2月2日 23時) (
レス) id: 140c01c743 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - コメント失礼致します。切なさを表すような表現工夫が個人的にとても好みな為、凄く続きが気になります。皆様の作品、全て見させていただきました。どれも面白くて大好きになりました！更新頑張って下さいね (2018年2月2日 19時) (レス) id: ba266bdcdc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みなららやん x他2人 | 作成日時：2018年2月1日 21時
