永遠 (ページ10)

今日:23 hit、昨日:9 hit、合計:9,352 hit

６ページ10

瞬間、意識が飛ぶ感覚がする。

　ああ、雷神様か……。いつも呼び出すのが急なんだよな。この肉体と意識が放されるみたいな感覚、いつになっても慣れないし。

　心の中で小言をぐちぐち並べていると、ようやく意識が落ち着いてきた気がした。

　目を開けるとそこは「一心浄土」だった。
　現世より時間の進みが遅いこの場所は、雷神が作り出した現世とは違う空間のようなもの。呪術的な言い方をすると生得領域にあたるのかな。
　座している雷神と雷櫻以外存在しないここは、まるで真っ白な砂浜のようだ。

　私は正座をし、深々と頭を下げる。

「雷神様、どのようなご用向きでしょうか？」

「そんなかしこまらないでください、A。あなたは私の化身、つまり私自身なのです。かしこまる必要はありません」

　その言葉に私は頭を上げた。

「……はい、影(えい)様」

「宿儺が現れましたね」

「はい」

「今は器が安定しているようですからそこまで心配はいりませんが、いずれまた戦うことになるでしょう」

「はい」

「そのときが来たら私はあなたの命を問わず、宿儺を殺すことに心血を注ぎます。稲妻の永遠のために」

「はい、存じております。私の心も体も、すべて影様のものです。影様のお望みのままに」

　そう言い、また深々と頭を下げた。

　影様は少し悲しそうな顔をした後、「A、こちらに」と私を呼んだ。
　私は影様の前に跪く。影様は立ち上がり、私の顔を両手でつかむと上へ向けさせた。

「A、あなたを永遠の糧にしてしまうこと申し訳なく思います」

　影様は顔を近づけてくると、私の額にそっとくちづけをした。

「かまいません。私は生まれたときから影様のものなのですから」

　影様はふっと微笑み「ありがとう」と言うと同時に意識が薄れていく。
　だんだんと意識が現世の私に戻ってきた。目を開けるとじめっと蒸し暑いいつもの高専だった。

　ポケットからスマホを取り出し今の時間を確認すると、ディスプレイに表示された数字は13:35だった。

「報告書はお昼食べてからにしよ」

　そう呟き、ポケットに財布があることを確認した私は行きつけのカフェへと足を動かした。