永遠 (ページ18)

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目の前に広がる見慣れない景色に、正気に戻る。

　そんな私を見て、悟がゆっくりと口を開いた。

「今から新幹線に乗って東京に行く。Aは俺たちと一緒に高専で暮らせ。もう手続きしてある」

　……。はあ!? 聞いてませんけど！事前に教えてよ。千弦は知ってたようだったし。
　無意識に眉間にしわが寄ってしまう。

　そんな私をよそに、悟は運転手と「席取れてるよな？」「はい。グリーン車をご用意しております」などと話している。
　じー、と彼を軽く睨んでいると、気付いたのか溜息をついた。

「だってお前、あのまま家にいたいかよ？」

「っ……」

　その言葉に口がどもる。
　鳴神家は私の生家だし、千弦もいるから完全に嫌いなわけじゃない。でも、またあの血を吐くような鍛練の日々に戻りたいかと言われると、考えてしまう。

「いやなんだろ？だから俺が連れ出してやるって言ってんの」

“いや”という言葉が心にすっと落ちる。

　ああ、そうか。私、ずっと“いや”だったんだ。
　毎日毎日血を吐くような鍛練があるのも、この小さな体に抱えきれないほどの仕事があるのも、うまくできなかったら水もご飯ももらえないもの、全部“当たり前”だと思っていた。

　そっか。“いや”って言っていいんだ。

「うん。私“いや”だ。家に戻りたくない。悟、高専に連れてって」

　もう迷いはない。悟の目を見てはっきりと伝えた。

　悟は楽しそうに笑い、「おう」と返してくれた。