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「ごっ、五条様!」
「だーかーら、それやめろっての」
「それ?」
「その五条様って呼び方だよ。気持ちわりい」
「ではなんとお呼びすれば」
五条悟は溜息をついた。
「かわいくねー。自分で考えろよ、A」
A、か。なら私は、
「悟。……でいいですか?」
「敬語もなしな」
ふう、と大きく呼吸をする。
「悟、でいいでしょ……?」
なんだか胸がムズムズする。初めての感覚だ。
私の回答に満足したのか、悟はニヤッと笑うときれいにまとめた髪の毛がぐちゃぐちゃになるほど私の頭を撫でまわした。
「ちょっ、やめ__」
頭の上で暴れる悟の手をつかみ、これ以上髪を崩されないようにする。
なにをするんだ、と睨んでやろうと顔を見上げた。
「っ……!」
やわらかく、慈愛に満ちたような顔で微笑む悟がいた。
先刻までの刺々しい態度が噓なんじゃないかと思うほどに。
私たち二人の間に、何とも言えぬ雰囲気が漂っている。
「な、に__」
「A様! ここにおられましたか!! 五条悟様も!?」
そんな雰囲気を壊すかのように、千弦の声が響いた。
「坊ちゃま! どこにおられるのか心配しましたよ。さあ、家に戻りましょう」
どうやら見つかってしまったようだ。
「A様、帰りますよ。抜け出すだなんて……帰ったらお勉強です」
私は迎えに来た車へと引っ張られる。
「ぁ、悟……」
ゆっくりと歩いている悟はこちらに振り向いてくれない。
そんな彼の背中に手を伸ばすと、ひらひらと手を振り返してくれた。
「行きますよ」
けれどもすぐに車を出され、あっという間に見えなくなってしまった。
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作者名:あわ | 作成日時:2023年12月3日 20時