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「俺の行きつけのカフェだ。腹減ったろ?」
うぃーと軽いノリで入っていく五条悟に、50代くらいの男性がいらっしゃいと声を返す。
私たちのほかに誰もいないみたいだった。
優雅な音楽と料理の音。やわらかい光が蔓延しているこの空間は、さっきまでの騒がしい場所とは別世界なんじゃないかと思うほど美しかった。
「おや? 今日はお連れ様がいるみたいですな」
「そ、こいつ外出たことないみたいでさ。マスター、なんかうまいもん食わせてやってくれよ」
「悟さんのお連れ様でしたら腕を振るわないとですね」
少々お待ちくださいと、マスターと呼ばれた人は準備に取り掛かる。
私たちの格好や外に出たことがないということに驚かないのかと思ったが、五条悟の行きつけらしいから事情は理解してくれているのだろう。
「どうぞ、お嬢さんもお掛けください」
マスターにそう言われ、五条悟の隣およびマスターの目の前に座る。
見るもの聞くもの感じるもの、そのすべてが私にとって知らないものばかりで、あたりをきょろきょろと見まわしていた。
「お待たせしました。当店自慢のクリームパンケーキとオレンジジュースです。悟さんにはいつものパフェをご用意いたしました」
そう目の前に出されたものは、クリームとフルーツがふんだんに使われたパンケーキ(というらしい)ときれいなオレンジ色をしたジュース。
いつも精進料理しか食べていなかったから、目の前のものが食べ物だとは信じられない。
「早く食えよ、めっちゃうめーから」
「冷めないうちにお召し上がりください」
マスターにフォークとナイフを渡される。
「い、いただきます」
テーブルマナーは教わっているからフォークとナイフの使い方はわかる。
一口サイズに切り、恐る恐る口に運ぶと。
「おいしい……」
ふわっとやわらかい生地、濃厚で不自然じゃない甘みのクリーム。
こんなに甘くておいしいもの食べたことがない。
目をキラキラと輝かせている私を見て、五条悟は満足そうに笑った。
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作者名:あわ | 作成日時:2023年12月3日 20時