好きだった人と、好きな人。【そらちぃ・エイジ】

23 ページ24

玄関を閉めて振り返ると
ソファから飛び出て見える赤い髪



「・・・・」



足音を立てないようにそっと
ソファのそばに座って
えいちゃんの寝顔を覗き込んだ。



閉じた瞼の下に伸びるまつげは
思ったより長くて
綺麗な肌と、なぜかなくなっている眉毛



「ヤンキーみたい」



さらりと赤い前髪に触れる
上に搔き上げたらおでこが顔を出した。



ドクンと爆音で心臓が跳ねる



暑いのは、この気温のせいで
熱いのは、この赤い色のせい



その時 私はおかしくて




なんだか
セーラー服を着ている気分になった


紺色のセーラー服を着て
えいちゃんはブレザーを着ている
ジャケットは脱いで、ワイシャツの
胸元のボタンを幾つか外して
袖は捲っている



屋上で自分の腕を枕にして
すやすや眠る彼の髪は
まだ綺麗な黒で
私はその隣で黙って課題を進めるふりをしていた



数学の難しい問題を
私は最初から解読する気は無くて
でもいつもえいちゃんに「教えて」と言って、
そうすると必ず彼は「じゃあ屋上ね」って
そういうから、二人きりになれるのが嬉しくて。




いつも途中で寝ちゃうえいちゃんのことを
ちょっと上から眺めるのが好きだった




サラサラと風に揺れて気持ちよさそうな
えいちゃんの黒い髪に
何度触れてみたいと思ったことか



無防備に投げ出された手を
握ってみたいと



自分の方に向けられた
寝顔にキスしてみたいと



このまま時が止まればいいのにと




何度も何度も願った

24★続きの方はここから読んでください！→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す