【狼ゲーム】無気力少女の謎 (ページ18)

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ONE-SEVENSTORY. ページ18

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(新村コウ)

"返しに来た"。

相変わらず、ひやりとする程の空々しい声が、

耳障りな濁りなく、すっきり耳に届いてくる。

そんな声と同時に俺の前へ差し出されたのは、意外にも几帳面に畳まれた見慣れた上着だった。

白を基調とし、青のラインが入った俺の上着。

それを差し出す品やかな腕に視線を滑らせ仰ぎ見る

すると、案の定、

取り澄ました表情のAAがそこにいた。

"早く受け取れ"。

そう言わんばかりに、

鋭利で容赦のない視線を俺に向けていた。

……素直に受け取ってやってもいい。

何も言わずに、受け取っても良かったのだがーー。

「……随分と気持ち良さそうに寝ていたな」

ーー無性に、その表情を歪ませてみたくなった。

"無"以外の感情を見てみたくなったーー。

こいつも嫌味に気付かないほど馬鹿ではないだろう

狡猾な笑みを浮かべ言い放った

神経質に尖った言葉がAを刺した。

しかし。

『………………』

唇は水平に結ばれたまま動くことはなかった。

眉一つ微動だにしない。

その表情が変わる事がなかったのは言うまでもない

嫌味に噛み付くほど子供でもないということか。

興醒めだ。

『礼は言う』

「……ふん」

ただ一言。

伝えられた短い礼の言葉に、

退屈気に一つ鼻を鳴らし、

Aの手元から自分の上着を受け取り羽織った。

ふわりと鼻をくすぐる柔軟剤の香り。

フローラルの香りか……？

……甘いな。

俺のコートに付着したほのかな香りを感じながら、

踵を返し、ソファへと足を運ぶAの背に

「待て」と一言声をかける。

すると、面倒臭げな瞳だけが肩越しに俺を見据えた

人形のように冷冷とした黒い瞳が、

"言いたい事があるなら早く言え"。

そう言いたげに、訴えているようだった。

それに無音の溜息を吐きつつ、口を開く。

「探索に着いてこい」

『…………ーーは？』