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side玲
「おはようさん、昨日はよく眠れたか？」
『おはようございます･･･はい』
「そんな堅くならんでええよ」
そんなこと言われても、彼の顔を見ていて元気よくぐっすりでしたなんて言えないだろう。
トントンさんの顔をチラチラと見ながら思う。
「俺からは書類の書き方と提出方法教えるだけやから、終わったら飯食ってエミさんとこ行きい」
にこっと気を使った笑みを見せる彼は、今まで彼らのことを注視してこなかった生活が長かった私でも体調が優れないことぐらいわかった。
その激務から私たち兵士の生活が保証されているということもあり、何も言えない。
「それで、まず玲さんがやってる書類がこういうのになるやろ？まあ、正式に幹部補佐になってからも役職変わらへんから書類も変わらん方が多いと思うけど」
『はい･･･』
ぺらりと見せられたのは、今まで通りの日誌のようなもの。
兵士たちが自身の訓練と任務、生活を記録し提出するものだ。
「それで、本格的に幹部補佐としての仕事でお任せするのがこっち」
長い文章の下に名前と日付と印鑑の欄があるだけの紙。
しかしパッと見て難しそうなことが書いてあるのがわかる。
「これは、重要な書類やねん。ほんまは他の兵士にみせたらあかんから、提出するまで部屋に人入れんように気いつけてな」
『っはい』
難しそうな話を聞き、相槌を打つ。
日誌は今まで通り廊下の提出ボックス。
重要書類はトントンさんに直接提出するように、との事だった。
山ほど積まれた紙束はほとんどが重要書類のよう。
これだけの激務をたった1人で任されていれば、それは顔色も悪くなる。
「じゃあ、俺からは終わり。あと、これからは近くで生活する仲間になる訳やから･･･その、仲良くしてな」
『もちろん、ありがとうございます』
「敬語もやめてええよ、な？俺もゾムと友達やねん」
『わっかり･･･た』
「まあ、ゆっくりな」
柔らかく笑うトントンさんにつられて自分の口角も上がる。
いつも固くぎこちない表情をしているトントンさんからは想像もつかないような、優しい笑み。
「それじゃあ、研修頑張って」
『ありがとう』
おっと、戸を閉める前にひとつ。
『トントンさん、初めての直近の仲間としての、お願いなん、だけど』
「なんや？」
デスクから振り返る彼の目を逃さないように合わせてひとこと。
『今夜はちゃんと寝て、疲れとって、ね』
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