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どのくらい走ったのだろうか。
「ちょ、もう無理!」
私の悲痛な訴えを聞くと、人気のない階段の踊り場で、仁王くんはピタリと止まり握っていた手を離す。
乱れた呼吸を整える私とは対照的に、彼は息一つ上がらず、そして汗もかいていなかった。
「はぁ、しんど…」
なんとか呼吸が落ち着くと、私はその場にしゃがみこむ。
「朝から災難じゃったなぁ」
仁王くんは楽しそうにケタケタ笑いながら言う。
「あの男はなかなかしぶといぜよ」
「仁王くん、あの風紀委員長さんと知り合いなの?」
「残念ながら知り合いじゃ」
肩をすくめて彼は答えた。
「それより、仁王くんもピアスあけたんだね」
「ああ、これか?」
彼は髪をかきあげると
「ニセもんじゃよ」
彼は耳についた綺麗な石を外しながら言った。
「えっ、えっー!!?!」
意味が分からず私は素っ頓狂な声を上げるのみ。
「なに、波多野も俺の詐欺に引っかかったん?」
仁王くんは楽しそうに、それでいて意地悪そうに笑う。
「は?ぺ、ペテン…?」
「そ、」
彼は私のそばにしゃがみこむと、私の左耳に顔を近づけて囁く。
「波多野の耳見とったら羨ましくなってのう」
「ちょ、近いって」
私はしゃがみこんだ姿勢のまま、後ろに1歩後ずさる。
それに合わせて仁王くんは1歩近づく。
「波多野のこと、綺麗なぁ思って見とったんよ」
さらにずいっと仁王くんは顔を近づける。
は、なに、この状況。
「なあ、」
仁王くんは私の後頭部に手をまわす。
これは非常にやばい。
私はこの感覚を知っている。
「ちょ、無理!!!」
近づいてきた端正な顔を私は思い切り引っ張ったく。
「いきなりなんやねん!!」
立ち上がって思い切り叫ぶと、教室に向かって駆け出す。
「やっぱりじゃ」
ポツリと仁王は呟く。
「面白い女」
面白いものを見つけた。
とでも言いたげにまた彼はニヤリと不敵に笑った。
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mizuki(プロフ) - こんばんは!初めましてみずきです。そして明けましておめでとうございます!この小説の更新を楽しみにしています!!これからも宜しくお願いします! (2019年1月1日 23時) (レス) id: cdcb52c135 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - グレイさん» 初めまして、コメントありがとうございます!デート...、必ずどこかのタイミングで書きますね\( 'ω')/ (2018年12月10日 7時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
グレイ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく読んでおります。是非主人公と仁王君のデートが見てみたいです! (2018年12月10日 5時) (レス) id: e55dd05625 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - ちょす。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!社畜成人済み同士是非とも仲良くしてください\( 'ω')/ (2018年11月28日 0時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
ちょす。(プロフ) - 連載がはじまったすぐに目をつけておりました!面白いです。引き込まれます‥仁王くんともっとイチャついてええんよ‥!更新楽しみにしてます。無理はなさらないで下さいね!私も社蓄・成人済みでお仲間ですね!(おい) (2018年11月27日 14時) (レス) id: f394a39ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛樹 | 作成日時:2018年10月28日 2時