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ここは大阪、四天宝寺中学校。
「オサムちゃん、校内は禁煙やで」
「おう、わかっとる」
咥え煙草に無精髭。おおよそ中学校教論には見えない彼は、今日もテニス部部長、白石に注意されている。
このやり取りは四天宝寺中学のテニス部ならもうとっくに見飽きた光景だし、オサムちゃん、と呼ばれた彼が大人しく煙草を吸うのを止めたことはただの1度もない。
「今日も莉都のねーちゃん来やんの?」
「神奈川に出張やって昨日も言うたやろ?」
「いーやーやー!わい莉都のねーちゃんに会いたい!ねーちゃんとテニスしたい!!」
「金ちゃん、あんまりワガママ言うんやったら毒手やで」
そして白石が、このゴンタクレこと遠山金太郎を、毒手という如何にも胡散臭い物で諌めるのもいつもの光景だった。
「でも金ちゃんの言う通りやわァ〜。アタシも早く莉都ちゃんに会いたいもん」
「小春!浮気か!!」
「ホンマ先輩らキモイっすわ」
小春とユウジのいつもの絡みに対して、スマホから視線を逸らさずに財前がボソリと呟くのもいつもの光景。
そしていつも通り、練習開始直前でありながら千歳千里の姿はなかった。
いつもと少しだけ違うとすれば、それは忍足謙也がとても静かだったということくらい。
「なんやケンヤ。今日はえらい静かやな。腹でも痛いんか?」
「ケンヤさんのことやから道端に落ちてるもんでも食べたんとちゃいます?」
「ケンヤはん変やで」
「告白された」
「「「ハァ〜?!?!」」」
部室にいた全員が声を揃えたところで、謙也はやっと正気を取り戻した。
「あれ…もしかしてオレ今いらんこと言うた?」
「ケンヤさん選ぶとか趣味悪…」
「財前それは失礼やろ!」
「ほんでケンヤはその告白してくれたねーちゃんとおつきあいすんの?」
「まあ、してもええかなとは思っとる」
「へぇ〜」
白石は意味ありげに笑っている。
「Aちゃんに報告しやなアカンなぁ」
「なんでそこでAが出てくんねん!」
「てっきりケンヤくんとAちゃんは両思いやと思ってたわ〜」
「オレはあんな態度デカくて野蛮な女好きちゃうわ!もっと女の子らしくて無邪気な子がええ」
「Aさん、そういや金髪なりましたよね」
「財前クン、なんでそれ知ってんの?」
財前は黙って自分の携帯を部員達に向ける。
そこにはAの写真があった。
すっかり面影のなくなった画面のAを複雑な顔でケンヤが眺めるのを白石だけが知っていた。
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mizuki(プロフ) - こんばんは!初めましてみずきです。そして明けましておめでとうございます!この小説の更新を楽しみにしています!!これからも宜しくお願いします! (2019年1月1日 23時) (レス) id: cdcb52c135 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - グレイさん» 初めまして、コメントありがとうございます!デート...、必ずどこかのタイミングで書きますね\( 'ω')/ (2018年12月10日 7時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
グレイ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく読んでおります。是非主人公と仁王君のデートが見てみたいです! (2018年12月10日 5時) (レス) id: e55dd05625 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - ちょす。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!社畜成人済み同士是非とも仲良くしてください\( 'ω')/ (2018年11月28日 0時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
ちょす。(プロフ) - 連載がはじまったすぐに目をつけておりました!面白いです。引き込まれます‥仁王くんともっとイチャついてええんよ‥!更新楽しみにしてます。無理はなさらないで下さいね!私も社蓄・成人済みでお仲間ですね!(おい) (2018年11月27日 14時) (レス) id: f394a39ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛樹 | 作成日時:2018年10月28日 2時