3年B組15番

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「結奈チャンはさぁ、強さってなんやと思う？」

私の毛を染めながら、唐突に莉都さんは聞いた。

「えっと…見た目がかっこよくって、言いたいことがハッキリ言えて、堂々としていること、ですかね…」

Aちゃんを思い浮かべながら答える。

「じゃあ結奈チャンはそうやないの？」

私は…。

「私は言いたいことも言えないし、いつもビクビクしているだけですから…」

周りの顔色を伺って、ただ笑っているだけ。
ファンクラブの子達には何も言い返せないし、もちろん蓮二に本音なんて言えるわけない。

「確かに、伝えなアカンことは伝えれるようにならなアカンなぁ」

莉都さんは染色を続けていく。

「せやけどな、何も言わへんことも1つの強さなんやで」

「え？」

「言えへんっていう選択は相手の為やろ。他人の事を考えられる結奈チャンは十分強いんやで」

何も言えない事も強さ？

「むしろさぁ、口では偉そうなこと言うて、見た目は強そうに見えるけど、他人の気持ち踏みにじってるヤツは結局見た目だけやで」

まあそれ私の妹の事なんやけどな。
と、莉都さんは溜息混じりに続ける。

莉都さんの妹、どんな人なんだろう。

そして髪を洗って乾かして、毛先を切っていく。

しばらくすると、鏡の向こうには違う私がいた。

「青…？」

鏡の向こうには肩くらいまでの髪に、毛先は深い青色…藍色の方が正しいかもしれない、にクルクルと毛先を巻いた私がいた。

「持ってるもんで勝負せなアカンで、金髪はナシやわ」

莉都さんは笑って言った。

「ほんでさ、結奈チャン本名本名教えてくれへん？」

モデルしてもらった人には一応連絡先とか聞いてるねん〜、と莉都さんは続ける。

「あ、財前です。財前結奈」

「財前…？」

莉都さんはポカンと口を開けている。
なんだかこんな反応、昔にもされたような…。

「もしかしてさ、」

人違いやったらゴメンやけど、と莉都さんは小さく呟くと

「四天宝寺に親戚おらん？」

「いてます、従兄弟です」

「光の従姉妹？！」

こんな可愛い従姉妹おるねんやったら光もちゃんと言えや。今度会ったらしばきやな。

莉都さんはまたブツブツと独り言を言っている。

「えっと…光の知り合いなんですか？」

「ああ、私四天宝寺テニス部の外部コーチ？いや、マネージャーやねん。学生の頃テニス部のマネージャーしとってさぁ〜その腐れ縁やな」


世界は思っている以上に狭い。
そして私は少しだけ目の前の私を好きになれるかもしれない。

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