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「あの」
私は思い切って目の前の主に声をかける。
「あなたは一体…」
「私は莉都。アンタは?」
「財前結奈です」
「じゃあ早速やけど結奈チャン。私のモデルやらん?」
何言ってるのこの人…?
「モデル…ですか?」
「そう、モデル」
ニコニコと笑顔で答える莉都さん。
どうやら揶揄われているわけではないみたい。
「せっかく神奈川来たんやし、敵情視察と思ったんやけどな〜。もう練習も終わってしもたみたいやし。ほんならサボり魔の後輩どついたろかな思ったけど、校舎広すぎて見つけられへんし。てかそもそもサボり魔やねんからもうここにおるわけないでな〜」
あはは〜なんて言いながら、目の前の莉都さんは矢継ぎ早に話を続ける。
「ほんでどないしようかな思ってたらアンタに会ったってわけ。どう?ここは1つ助けられたお礼やと思ってモデルやってくれへんかなァ」
「わ、わかりました」
何のモデルかわからないし、目の前のこの人が言ってることがどこまで本当のことかわからないけれど、助けてもらったことに変わりはない。
「じゃあはい。その紙に書いてある所に今度の日曜来てな」
じゃーね、なんてヒラヒラ手を振りながら莉都さんは正門に向かって歩き出す。
あの後ろ姿…誰かに似ているような。
あのすっと伸びた背筋。堂々した佇まい。
ああ、Aちゃんに似ているんだ。
莉都さんの後ろ姿をぼうっと見送っていた時だった。
「結奈?」
1番会いたくて、だけど同じくらい会いたくない人の声。
「蓮二」
振り返ればやっぱりそこには蓮二がいた。
隣には真田くんと、赤也くんもいる。
「こんな遅くまで何してた」
蓮二は冷たく言い放つ。
「柳先輩そんな言い方したくても言いじゃないっスか!結奈先輩、柳先輩に会いたくて待ってたんスよね?」
そうっスよね?
なんて続けながら屈託のない笑みを浮かべる赤也くん。
「俺たちはこれから精市のところに行く」
それはつまり、私とは一緒に帰れないってことでしょ?
「うん、私一人で帰れるよ。大丈夫」
私ちゃんと笑えてるのかな。
「え〜!結奈先輩も一緒に部長に会いに行きましょうよ〜」
赤也くんが私の手を引きながら駄々っ子みたいに言う。
「赤也」
真田くんが困った顔をしながら赤也くんをなだめている。
「折角だけど、邪魔しちゃ悪いから」
いつからだっただろうか、蓮二が変わっちゃったのは。
たぶんそれは、幸村くんが倒れたあの時から。
仕方ないって諦める私と、気づいてって叫ぶ2人の私がいた。
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mizuki(プロフ) - こんばんは!初めましてみずきです。そして明けましておめでとうございます!この小説の更新を楽しみにしています!!これからも宜しくお願いします! (2019年1月1日 23時) (レス) id: cdcb52c135 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - グレイさん» 初めまして、コメントありがとうございます!デート...、必ずどこかのタイミングで書きますね\( 'ω')/ (2018年12月10日 7時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
グレイ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく読んでおります。是非主人公と仁王君のデートが見てみたいです! (2018年12月10日 5時) (レス) id: e55dd05625 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - ちょす。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!社畜成人済み同士是非とも仲良くしてください\( 'ω')/ (2018年11月28日 0時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
ちょす。(プロフ) - 連載がはじまったすぐに目をつけておりました!面白いです。引き込まれます‥仁王くんともっとイチャついてええんよ‥!更新楽しみにしてます。無理はなさらないで下さいね!私も社蓄・成人済みでお仲間ですね!(おい) (2018年11月27日 14時) (レス) id: f394a39ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛樹 | 作成日時:2018年10月28日 2時