3年B組15番

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練習中チラチラと波多野の方を見れば、いつの間にか数人の女子生徒に囲まれている。

良くも悪くも俺の姫さんは目立つのう。
なんて思いながら、真田に見つからないようにしつつ、波多野の傍へと近づいていく。

しかし、だ。

どうやら虐められているのではないだろうか、
という考えは俺の取り越し苦労だったようで。

あの真田にも平気で食いつくような彼女は、数人の女子生徒相手では役不足だったらしい。

俺が助けに入るより先に、女子生徒の方が逃げ出して行った。

「お前さん、本当に面白い女じゃの」

「何それ、褒めてんの？」

見るからに不機嫌そうな顔で彼女が言う。

「最上級の褒め言葉じゃ」

そこで俺は意を決して、次の言葉を発する。

「Aは見てて飽きん」

そう続けると、

「なっ…」

突然彼女が顔を真っ赤にした。

正直赤くなりたいのはこっちの方なんじゃが。

なんじゃその反応。

予想外の反応に俺はただ目を細めて、平静を装うので精一杯。

「きゅ、急に名前で呼ぶのはアカンやろ…」

彼女はへなへなとその場にしゃがみ込むと、顔を伏せてしまった。

はて、ここからどうしようかのう…。
俺が思案していると、彼女は耳まで赤くなっていった。

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仮にも悪口言われてた彼女に対して、面白いとか言うか？
嫌味のひとつでも言ってやろうと口を開いた瞬間。

「Aは見てて飽きん」

と、不意打ちで名前を呼ばれてしまった。

「なっ…」

あまりに突然呼ばれてしまったので、嫌味を言ってやろうとかそういう考えは吹き飛んでしまう。

自分の顔の熱が上がっていくのがわかった。

「きゅ、急に名前で呼ぶのはアカンやろ…」

私の強気な気持ちとは裏腹に、やっと出てきた言葉は本当に情けないものやった。
さらに私はへなへなとその場にしゃがみ込む。

せめてもの抵抗と思いながら、これ以上赤い顔が仁王くんから見えないよう、顔を伏せる。

きっと女たらしの仁王くんは、私のこの反応を面白がっているに違いない。

ほんの少しだけ顔をあげれば、琥珀色の目を細めて私を眺める彼がいた。

そこで私は先日、仁王くんを揶揄った際に言われた言葉を思い出す。

『波多野、今度覚えときんしゃい』

なるほどな、私はこの詐欺師にまんまと1本取られたわけや。

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本当は仁王くんにそんなつもりが一切なかったと知るのはもう少し先の話。

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