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「波多野」
それは5限目の数学の時間のことやった。
私の大嫌いな数学は、突然の先生の病欠により自習になった。
大盛り上がりの教室は、どこもかしこもざわついていて、よそのクラスから先生怒鳴りに来るんちゃうかとヒヤヒヤするレベル。
そんな時、前の席の私の(一応)彼氏である仁王雅治が声をかけてきたのだ。
「どないしたん仁王くん」
「今日、部活見に来やん?」
そりゃまた急に。
「別にええけど…」
「ほんまか?!」
と、珍しく嬉しそうに瞳をキラキラさせている。
なんや、この人こんな顔もできるんやな。
いや〜珍しいもん見たわ、
私がそう思っていた時やった。
急に仁王くんが目を見開いたので、何かと思い後ろを振り返る。
が、そこには必死に携帯ゲームを攻略する丸井くんの姿しかない。
何もないやん。
私はまた仁王くんの方に向き直る。
再び仁王くんに視線を戻せば、どこかうわの空な表情をした仁王くんがいた。
「なんか今日の仁王くん、変やで」
私が声をかけると、仁王くんは何かをボソリと呟いてそっぽを向いた。
「え?」
聞き返すが、不貞腐れてしまったのか
仁王くんはムスッとした顔で唇を尖らせている。
「変なの」
私はそう漏らすと、読みかけていたファッション誌に視線を落とした。
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波多野に声をかけ、部活見学に誘うことに成功した。
俺は心の中で小さくガッツポーズをする。
ふと目線を波多野から逸らして見れば、丸井と目が合った。
「名前で呼べよ」
丸井が口パクで訴えかける。
そんなこと出来るわけないじゃろ。
と、俺は目を大きく見開いた。
それを不審に思ったのか、波多野が丸井の方を振り向くが、丸井はまるで何事も無かったかのように、ゲームを再開させている。
名前で呼ぶ。それは簡単なようで難しい。
もしAって呼んだら、どんな顔するんじゃろ。
そう考え込んでいると、
「なんか今日の仁王くん、変やで」
と、言われてしまった。
「俺を変にさせてるのはAぜよ」
「え?」
小さくごにょごにょ呟いたせいで、どうやら彼女には聞こえなかったらしい。
全く人の気も知らんで。
再び彼女を盗み見れば、もう俺の事なんて気にもとめず読みかけの雑誌のページをめくっていた。
「調子狂うナリ…」
俺の声はうるさい教室の中に吸い込まれて消えていった。
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mizuki(プロフ) - こんばんは!初めましてみずきです。そして明けましておめでとうございます!この小説の更新を楽しみにしています!!これからも宜しくお願いします! (2019年1月1日 23時) (レス) id: cdcb52c135 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - グレイさん» 初めまして、コメントありがとうございます!デート...、必ずどこかのタイミングで書きますね\( 'ω')/ (2018年12月10日 7時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
グレイ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく読んでおります。是非主人公と仁王君のデートが見てみたいです! (2018年12月10日 5時) (レス) id: e55dd05625 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - ちょす。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!社畜成人済み同士是非とも仲良くしてください\( 'ω')/ (2018年11月28日 0時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
ちょす。(プロフ) - 連載がはじまったすぐに目をつけておりました!面白いです。引き込まれます‥仁王くんともっとイチャついてええんよ‥!更新楽しみにしてます。無理はなさらないで下さいね!私も社蓄・成人済みでお仲間ですね!(おい) (2018年11月27日 14時) (レス) id: f394a39ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛樹 | 作成日時:2018年10月28日 2時