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蔵ノ介くんと別れて、お姉ちゃんの家に帰ると、もうお姉ちゃんはベランダでタバコを吸っていた。
「そう言えばさ、」
私はまた換気扇を回しながら話しかける。
「お姉ちゃんってなんでタバコ吸い出したん?」
お姉ちゃんが一人暮らしを始めたのは、美容師になってすぐの頃。たぶん、タバコを吸うようになったのもその頃くらいからやった気がする。
5年くらい前か。
「Aはさぁ、忘れられへんくらい好きになった人っておる?」
質問を質問で返されたことと、その質問が今の私にはどうしようもないもので、私は何も言われへんかった。
「タバコ吸ったら思い出すねん」
静かに煙を吐き出すと、お姉ちゃんは続ける。
「どんなに忘れようと思っても、別の人と付き合ってみても忘れられへんの」
「うん」
「その人と同じにおいさせて、煙吐き出してるとさ、私まだ好きなんやなって実感するねん」
じゃあ禁煙しろよって話なんやけどな〜、
なんて、最後はおどけて言うと、タバコを灰皿に押し付ける。
「私にとってのタバコはさ、アンタにとっての金髪みたいなもん」
姉はベランダから室内に入ると、私の髪をくしゃりと触る。
「えっ、なんでそれを」
「私が四天宝寺テニス部の元マネージャーやってこと、忘れたんか?」
そうか、お姉ちゃんはアイツのことも間接的に知ってたんか。
「Aがあの子のこと忘れられへんくて自分の髪を金色に染めるように、私は忘れられへんからタバコを吸うねん」
じゃあもし、私が金髪をやめる時がきたら。
それはもしかしたら他の誰かを好きになった時なんやろうか。
他の誰か。
脳裏に浮かんだのは、金髪のアイツと。
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mizuki(プロフ) - こんばんは!初めましてみずきです。そして明けましておめでとうございます!この小説の更新を楽しみにしています!!これからも宜しくお願いします! (2019年1月1日 23時) (レス) id: cdcb52c135 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - グレイさん» 初めまして、コメントありがとうございます!デート...、必ずどこかのタイミングで書きますね\( 'ω')/ (2018年12月10日 7時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
グレイ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく読んでおります。是非主人公と仁王君のデートが見てみたいです! (2018年12月10日 5時) (レス) id: e55dd05625 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - ちょす。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!社畜成人済み同士是非とも仲良くしてください\( 'ω')/ (2018年11月28日 0時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
ちょす。(プロフ) - 連載がはじまったすぐに目をつけておりました!面白いです。引き込まれます‥仁王くんともっとイチャついてええんよ‥!更新楽しみにしてます。無理はなさらないで下さいね!私も社蓄・成人済みでお仲間ですね!(おい) (2018年11月27日 14時) (レス) id: f394a39ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛樹 | 作成日時:2018年10月28日 2時