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綺麗に染め直された金髪と、約束通り耳朶にもう1つピアスを開けてもらった私は、仕事があるからとサロンに残った姉と別れ、1人カフェでコーヒーを飲んでいた。
「あれ?Aちゃん?」
聞き慣れた声がして振り返る。
「やっぱりそうやん、Aちゃんやん!」
「蔵ノ介くん…?!」
「えらい思い切ったことしたなぁ」
私の金色になった髪を見つめながら彼は言う。
「Aちゃん、急に転校するんやもん、びっくりしたわ」
「ごめん、何も言わんで」
「いや、ええんやで」
言いたくないことだってあるやろうし、と彼は続ける。
「でもえらいみんな寂しがっとったで」
そしてそこで私はアイツの顔を思い浮かべる。
アイツも寂しがったりするのだろうか。
「やっぱ謙也のこと気になる?」
「え?」
「Aちゃんの顔に書いてあったで」
「え?え??!」
激しく困惑する私。
「うそうそ、冗談や冗談」
「なんや、からかうのやめてよ」
そしてテニス部の話になる。
新しい1年生が入ってきたこととか。
この1年生が全然言うこと聞いてくれへんくて蔵ノ介くんは手をやいてるとか。
小春ちゃんと一氏くんは相変わらず仲良しとか。
九州からめっちゃデカくてテニスが強い転校生がきたとか。
「ところでAちゃんはどうなん?学校楽しい?」
そこで私も話をする。
財前くんの従姉妹と友達になったこととか。
丸井くんがガムを膨らますのが上手いとか、真田くんは規律に厳しいとか、柳くんは失礼とか、仁王は女たらしとか、赤也くんはかわいいとかそんなこと。
「そうかぁ〜Aちゃん、立海におるんか…」
そうかぁそうかぁなんて、蔵ノ介くんは1人呟き何かに納得した様子やった。
「立海のテニス部ってめっちゃ強いんやで」
「へえ、そうなん」
「へえ、そうなんって…俺らも去年負けたんや、立海に」
「…そうなんや」
「だから言うといてな、テニス部の皆に」
「なんて?」
「今年の全国、優勝するのんは四天宝寺やでって」
テニスの話をする蔵ノ介くんはいつだって真剣や。
でも今日は特に。
「それと、幸村くんお大事にとも言うといて」
「幸村くん?」
「あっ」
Aちゃんは知らんのか、と蔵ノ介くんはまた1人呟くと、
「今のは忘れて」
と言った。
幸村くん…って誰なんやろう。
立海のテニス部は四天宝寺に匹敵するくらい変人揃いやけど、まだとんでもないやつがおるんやろうか。
そして私は蔵ノ介くんに大切なことを聞けずにいた。
たった一言が言えなかった。
アイツ、元気かな…。
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mizuki(プロフ) - こんばんは!初めましてみずきです。そして明けましておめでとうございます!この小説の更新を楽しみにしています!!これからも宜しくお願いします! (2019年1月1日 23時) (レス) id: cdcb52c135 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - グレイさん» 初めまして、コメントありがとうございます!デート...、必ずどこかのタイミングで書きますね\( 'ω')/ (2018年12月10日 7時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
グレイ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく読んでおります。是非主人公と仁王君のデートが見てみたいです! (2018年12月10日 5時) (レス) id: e55dd05625 (このIDを非表示/違反報告)
凛樹(プロフ) - ちょす。さん» 初めまして!コメントありがとうございます!社畜成人済み同士是非とも仲良くしてください\( 'ω')/ (2018年11月28日 0時) (レス) id: 1df7087ebd (このIDを非表示/違反報告)
ちょす。(プロフ) - 連載がはじまったすぐに目をつけておりました!面白いです。引き込まれます‥仁王くんともっとイチャついてええんよ‥!更新楽しみにしてます。無理はなさらないで下さいね!私も社蓄・成人済みでお仲間ですね!(おい) (2018年11月27日 14時) (レス) id: f394a39ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛樹 | 作成日時:2018年10月28日 2時