sg ページ8
今日は志賀さんとの美術館デート。
目の前に飾られている大きな絵。
【ヴィーナスの誕生】
:サンドロボッティチェリ
「ところで、ヴィーナスって切り落とされた男性のあそこから生まれたってこと知ってる?」
『いえ、知らないです』
それについてどうやら知識を披露してくれようとしている志賀さん。
待ってましたっっっ!!!
美術館だからお静かにってことで私たちの声は小さめで自然と距離も近くなる。
「天空神ウラノスが醜い自分の子供を嫌って妻のガイヤの中に戻してしまうんだけどね。怒った彼女がその罰として息子のひとりに命じてウラノスのあそこをちょきんって鎌で切り落とさせたんだ。」
『それってギリシャ神話でしたっけ…?』
「あ、そうそう……」
私がぱっと顔を上げると近くには志賀さんのお顔。
でも、こんなに近いとは思ってなくてほぼ0とも言える距離の中、一瞬ときが止まる。
顔を赤らめて少し離れた私たち。
「……で、海に投げ込まれたそれが泡になってそこからヴィーナスが誕生したんだって。」
心做しか早口になってしまった志賀さん。
耳まで真っ赤に染めて、前に飾られている絵よりも熱い視線を私に寄せる。
ちゅ
「あはは……ごめん、つい……Aさんが可愛くて。」
爽やかな笑顔で笑う彼。
「行こっか、」
私の前に出された暖かい手を握って、ゆっくりと時間を過ごせた幸せな土曜日。
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作者名:愛璃 | 作成日時:2020年2月23日 21時