神社 ページ2
深い山奥に建てられた古い古い神社。
お参りにやって来る人なんて全然いない。
建立されて何百年、もしかしたら何千年も経つのに、鳥居の色は剥がれ落ちていなかった。
燃え上がるような真っ赤の鳥居の下に、透明な液体が入った透明な瓶が置かれている。
俺はそれを抱えて、鳥居の奥へ更に続く階段を上った。
「ジェシー、来たよ」
薄い紫の布で隔てられたその部屋に向かって、声をかける。
たとえ神子と言えど。
人間の中で、最も神様に近付ける神子だとしても、こちらから易々と神に近付くことなんて、できないのだ。
「もう１ヶ月経ったの？」
「そうみたい」
透明な瓶に入った液体は美酒というやつで。
いわゆる、神様への捧げ物。お供え物だ。
ただ、ジェシーはこういうのを嫌っていて。
お酒は大好きだって言ってるけれど、人々から捧げられたお酒は一切口にしない。
重たい瓶を、布の前にコトリと置いた。
「こーち、村の人たちに言っといてくれない？捧げ物もういらないって」
「無理だよ。俺もう村の人たちと接触できないもん」
「……ごめん」
布の向こう側から、くぐもった言葉が聞こえてきて、その直後にジェシーが現れた。
深紅の薄い布を幾重にも重ねて身に纒い、ゆっくりと腰を折って瓶を持ち上げた。
ジェシーが動く度に、空気がぴりぴり振動して、ふわりと金粉が舞う。
持ち上げた瓶は、部屋の奥の祭壇に並べられた。
「ジェシーが謝ることじゃないよ」
「でも」
「俺、家族とかいないし……一生ここにいたって、楽しいんだ」
神子や鬼子として、彼らの下へ捧げられた人達は、2度と村に戻ることは出来ないし、捧げ物を持ってきた人間との接触も出来ない。
人間は穢れであるから、神聖なる彼らとの関わりを持つべきではない。
とか何とか、それらしい理由を説明されたけど、俺はそれを信じていない。
「こーち、来て」
「いいの？」
「うん」
神子としてここにやって来て、早２年ほど。
初めて、紫の布の向こう側へ招かれた。
そこは聖域で。俺なんかがそう踏み込んで良い場所じゃない。
「ようこそ、」
なんて、恭しく礼をして布を持ち上げてくれるジェシー。
段に足をかけると、それだけで体に弱い電流が流れたみたいにチリチリする。
彼らの力は、俺たち人間には強すぎる。
眩しすぎる光は。強すぎる力は、毒だ。蝕まれていく。
彼らはそれを知らない。気付いていないからこそ、……。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜汰(プロフ) - thhyさん» 更新頻度が低くて申し訳ないです……。ちょっとずつですがお話進めるように頑張ります！！ (2月11日 19時) (
レス) @page6 id: 6f5ee38495 (このIDを非表示/違反報告)
thhy - 更新待ってます！ (2月3日 15時) (レス) @page5 id: 69657aab33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
