5話 ページ5
俺は所謂、エリート一家の息子だった。
子供に恵まれなかったらしく、ようやく出来た一人息子。
大層可愛がられた記憶がある。
庭に出る事はあっても、公園に行く事はなかった。まさに箱入り息子だった。
一人で家にいるときは、ピアノを弾いて遊んでいた。それは、幼いながらに興味深く楽しいことだった。
それを聴いた親は……今考えればただの親馬鹿なんだろうけど、才能があると思い俺にピアノを習わせた。
次第に俺は上達していく。金を払っているのだから、ある程度伸びるのは当然のことだった。けれど、親は……きっと俺も調子に乗ってしまった。
周りの子に自慢をし、自分は素晴らしいのだと広めていった。
そうしていると、あっという間だ。
“ドレミの歌が弾けたね、よかったね”なんていう時代はとっくの昔に過ぎ去った。
コンクールは賞を取るのが当然だと、プレッシャーは大きくなっていった。
“かけるくんって、ピアノ上手なんだね！すごい！”
自慢をすればするほど近所の人は遠ざかっていく。
そんななか、近付いて褒めてくれたのは、拓真だった。次第にわからなくなっていく俺に優しく声をかけたのだ。
何を弾けばいいのか、何をすればいいのか、何のためにすればいいのか、何もかもがわからなくなり始めた頃に、俺は柚井拓真という少年に出会った。
庭にいるときに、柵越しに話しかけられたのだ。“一緒に遊ぼう”と。
初めてのことだった。ピアノのことも何も言わずに、ただ純粋に俺と遊びたいという人間が新鮮だった。嬉しくって、すぐに付いていった。
帰ってくるのが遅くなって母さんに叱られた。そんな毎日が続いたある日のことだ。
俺は両親の会話を聞いてしまった。親友の悪口を聞いてしまった。俺のせいで下に見られる親友が嫌だった。苦しかった。
少しずつ溜まっていく�犢�い何か�瓩鵬兇狼ど佞い討い拭Ｎ梢討世辰撞ど佞い討い拭�
けれど、そのまま放ったらかしにしておいた。出ていくことなく溜まっていく�犢�い何か�瓩蓮�確かにあの日爆発した。溜めていたのだから、仕方の無いことだった。
親友と遊べば親友が嫌われ、家にいればプレッシャーに押しつぶされる。
ならば、ならばーーー！
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作者名：朝霧 | 作成日時：2016年8月20日 20時
